「紫陽花」は高知に咲いていた

 先日,松居孝行さん作曲の「紫陽花」について、ギター二重奏曲の楽譜を探しているという記事を書いたところ、思いがけず何人かの方から反応をいただきました。

 曰く、楽譜の掲載元を知っている、楽譜を持っている、サークルで流行っている、ご自身の演奏をMySoundにUPしている・・・、などなど。

 すごくありがたく思ったのと、皆さんがこの曲をとても大事にしておられることが分かり、とても嬉しくなりました(ありがとうございました!)。

安並水車の里(高知県四万十市)

 

 そこでお礼と言ってはおこがましいですが。以前、毎日.jp(毎日新聞)に掲載された,この曲を広めたギターデュオ「いちむじん」と作曲者の松居孝行さん,そして「紫陽花」をテーマとした記事を紹介します。

 今年の2月ごろ「紫陽花」で検索して見つけた記事を保存していたもので、3者の関連と松居さんの正体(?)、そして「紫陽花」の出自がプロの文章でまとめられています。

 ペーパーの新聞でいう地方版のコラムのような扱いの記事でしたが、今日時点で検索すると同サイトからは既に削除されているようです。

 記事の引用とか著作権とかいろいろあると思いますので、支障があればご連絡ください。


 

(2009年2月某日の毎日.jpに掲載された記事をそのまま掲載しています。)

【支局長からの手紙:師弟のハーモニー /高知】

 「将来の目標はプロです」。8年前、学生服の初々しい高3がクラシックギターを携え、支局を訪れました。コンクールで銅賞に輝いた山下俊輔さん(24)です。取材しながら内心で「そんな簡単なもんじゃないよ」。ところが……

 今月13日、県立美術館ホールの舞台に山下さんは立っていました。県立岡豊高時代の同級生の宇高靖人(うだかやすひと)さんと一緒です。既にCDを5枚出し、現在、人気上昇中です。3月末に始まるNHK朝の連続テレビ小説ではBGMを演奏します。デュオ名は古い土佐弁で一生懸命を意味する「いちむじん」です。

 2人は高校時代に松居孝行教諭(39)の手ほどきでギターを始めました。松居教諭はコンクール優勝歴のある国内有数のギタリストです。今も同校でギターを教え、指導力には定評があります。

 演奏会を前に最新CD「Scene」を買いました。特に気に入ったのが抒情的な「紫陽花」です。作曲は莉燦馮(リサフォン)さん。2人にこれまで7曲提供しています。中国系の人かなあ。すてきな曲を書くなあ。今回の演奏会でその正体が明かされました。「莉さんというのは、僕らの高校の松居先生です」

 松居さんは2人が桐朋学園短大(東京)に進学する際、助言しました。「クラシックギターの二重奏は無いに等しい。狙い目だ」。しかし、デュオを組んだものの、コンクールで芽が出ません。別の催しがきっかけで、教え子のために初めて作曲したのが「夜更来(よさこい)変奏曲」です。必死でした。高校時代に作曲の基礎を学んだのが役に立ちました。

 04年、2人はこの曲で日本重奏ギターコンクールに挑みます。クラシック界では演奏と作曲は別物という考え方が主流です。「『演奏家・松居』が作った曲ではコンクールでの評価が低くなる」。考えたのが、愛娘2人の名前をもじった「莉燦馮」でした。2人は期待に応えて優勝し、念願のプロの道へ。

 松居さんは教え子のために作曲を続けます。2曲目が「紫陽花」です。小学生の時に見たあじさい街道(高知市春野町)の切ない美しさを曲に込めました。「少ない音で伝えたいことを表現できた。こじゃんとしっとり系の曲です」。学生時代に迷った末、プロの演奏家ではなく、教師の道を選んだ松居さん。今は「夢にも思わなかった」作曲家として活躍し、聴く人を酔わせます。「1曲1曲違った作風の曲を書いていきたい」

 演奏会のアンコールでサプライズがありました。松居さんの登場です。手にはギターではなく、二胡。親指を痛めてこの数年、ギターを弾けず、二胡をマスターしました。待ち望んだ師弟初の共演です。豊かな音量、深い余韻。松居さんは二胡の演奏でも聴かせます。共演最後の曲は「紫陽花」でした。

 夢をかなえた教え子。当初とは違った夢を見つけた恩師。舞台で山下さんは語りました。「松居先生がいなければ僕らはいませんでした」。師弟が奏でる夢のハーモニーに客席で胸が熱くなりました。【高知支局長・大澤重人】

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