四国八十八ヶ所札所巡り_第6回(所感編)

 このゴールデンウィークに6回目の四国巡礼に行ってきましたので、所感をまとめておきます。

 廻った寺とコース、歩いた距離などの詳細は「データ編」、道中の写真は「写真編」に整理しますので、どうぞそちらも併せてご覧ください。

 

寺の境内に入って手水舎で手口を清めたら参拝前のご挨拶として鐘を突かせていただく。参拝後に突く「戻り鐘」は、功徳が消え縁起が悪いとされている。

 

1_旅行日程
  1. 1日目:4月30日(月)バスタ新宿から夜行バス(コトバス松山駅前行き)で出発
  2. 中4日:5月1日(火)~4日(金)の4日間で45番から58番までの14ヶ寺を周った。
  3. 最終日:5月4日(金)松山駅を夜行バスで発ち、6日目の5月5日(土)早朝にバスタ新宿帰着。

 

2_現地での天候など
  1. 正味丸4日のうち1日だけ雨に降られたが、基本的にこの時期らしい暑からず寒からずのちょうど良い気候に恵まれた(普段の行いの成果と思っていただきたい(笑))。
  2. しかもラッキーなことに全行程を通して乾いた風が強めに吹いていた。そのため体力消耗が少なくて済み、思った以上に歩行距離が伸び自己ベストも更新できた(4日間で歩いた距離69.1km⇒一日平均17.3km、Max24.7km/日)。
岩山に埋め込まれたような45番岩屋寺の本堂。梯子の上は法華仙人の修行場跡だそうな。高いところは苦手なので登るのはよした(汗)。

 

3_宿泊について
  1. 5/1ホテル:ガーデンタイム(愛媛県上浮穴郡久万高原町)★★★★★
  2. 5/2簡保の宿:夢寛歩道後(松山市溝辺町)★★★★☆
  3. 5/3ビジネスH:今治プラザホテル(今治駅前)★★★☆☆
  4.  「ガーデンタイム」は、松山市内から1時間以上バスに乗った先の久万高原にあり、若いご夫婦+αで1階のレストランも営業されているので食事がおいしい。部屋も事前の想像が良い方に裏切られてビジネスH並み。
     それに奥様がいたって気さくな方で、むさ苦しい初老のオッサンにも極めてフランクに話しかけてくださり、気持ち良く身体を休めることができた。
  5.  「夢寛歩道後(ゆめかんぽどうご)」は、奥道後に位置するいわゆる「公共の宿」で、なんと言っても温泉の大きな風呂でゆっくり手足を伸ばせるのがいい。施設も良いし食事も瀬戸内らしく鯛しゃぶが供されるなど充実している。
     ★ひとつ減は主にコスト面。自分で選んでおいて言うのもなんだが、巡礼者向けのローコストなプランがあれば更に嬉しい(贅沢?)。
  6.  「今治プラザホテル」は、ごく普通のビジネスHで可も不可もなかった。
     ひとつ驚いたのはサイクリストの宿泊者が多いこと。フロント前にはサイクルラックが設備され、かなりの数の自転車が置かれていた。
     なんでも今治を一方の起点として島伝いに瀬戸内海を横断する有料道路「しまなみ海道」は今やサイクリストの聖地らしく、その関係で自転車愛好家が国内ばかりか海外からも集まって来るらしい。
     往年の自転車少年(筆者です)に断わりもなくそんなことになっているとは、というか巡る巡るよ時代は巡る、ってことなんだろうな~
51番石手寺境内の三重塔。鎌倉時代の建立で重要文化財に指定されている。

 

4_他人様との交流及び人物観察
  1. 道中で交流した方々
    • 「ガーデンタイム」の奥様と宿泊者の巡礼女性
    • 大阪から巡礼に来ていた67歳の半ズボン○○さん
    • 江東区から巡礼に来ていた61歳のバンダナ男性
    • ローソンのイートインで出会ったイギリス人の若い女性
    • 58番で出会ったオレゴンから来たアメリカ人男性ハーノさん
    • タクシーの運転手さんたち
    • 道々、行き会った地元の皆さん
  2. ガーデンタイムの奥様
    • クルクルと良く働く方で、一見の宿泊客にも全く臆することなく極めて自然に接し、そして中学生の娘さんとのスマホを巡るバトルをそれは楽しそうに語ってくださった。
    • 嫁に来た先がたまたまホテルだったとのことだが、幸せな日々が聡明そうなお顔の向こうに透けて見えた。
  3. 大阪の半ズボン○○さん
    • 1日目の夕方に45番で出会い、2日目も46番に向かう道のりを一緒に歩いて、お遍路や健康のことなどいろいろ話をした。
    • 今回は2巡目の途上で、全部歩くわけではないと仰っていたが、よく陽に焼けた逞しいふくらはぎと、きれいな大阪弁が印象的だった。
  4. 江東区のバンダナ男性
    • 48番西林寺の東屋で一緒になった。
    • 筆者と同じく定年後にお遍路を始めたとのことだが、「巡礼なんて金と体力と暇がある人のやること・・・」と、それを言っちゃぁおしめーよ的な科白を脈絡なく繰り出されてドン引きしてしまった。
  5. イギリス人の若い女性
    • 前日からいくつかの寺で顔を合わせ、休憩したコンビニでもたまたま一緒になったので勇気を出して声をかけてみた。
    • 現在は同志社大学に籍を置き日本文化を勉強中とのことで、日本語もかなりのものでホッとした。
    • 外国の方に自国のことを知ってもらえるのは嬉しい、イギリスのことは詳しく知らないが紅茶は大好き、などと怪しい英語交じりの日本語で言うと、「あなたの英語も素晴らしい」と言ってくださった。
    • 褒めてもらって嬉しいには嬉しかったが、彼の紳士の国にもお世辞みたいな概念はあるのだろうか、英国流のジョークではなかろうかなどと邪念が頭をよぎり、素直に喜べない小さな自分が居た。まだまだ修業が足らない。
  6. オレゴンから来たハーノさん
    • 58番の休憩所でみかんのドライフルーツをお裾分けしてくださり、いかにも話したそ~~な目をこちらに向けてきた。
    • 64歳、Microsoftほかのソフトを他言語に翻訳する会社の元ダイレクターで、日本語はほぼ完ぺき。約2か月の休暇で日本に来て5月中にお遍路を貫徹し、京都、大阪にも行ってみる予定とこのと。
    • とにかく人懐っこい方で、故郷オレゴンの産業(林業が盛んとのこと)、24歳の娘さん(…と疎まれている父親)、趣味の自転車(オレゴンには自転車のビルダーがたくさんあるそうだ)等々を楽しく語って下さった。
    • こちらも勢いで、質問された「大阪のグルメは?」に、お好み焼き、たこ焼き、とにかく粉もんでっせ~とリコメンドし、ウナギも食べてみたいと仰るので背開き・腹開きのエピソードをドヤ顔で語って聴かせるなど調子に乗ってしまった。
    • 3時間ほど一緒に行動し最後は握手で分かれたが、日本を堪能し好印象を持って帰られることを切に願った。
  7. タクシーの運転手さんたち
    • 巡礼中、タクシーに乗ることがたまにある。今回も2回利用した。
    • 歩き遍路を基本としているので、タクシー利用については公共交通が使えないルートにおいて時間又は体力が尽きた場合に限るという自己ルールを設けている。
    • なので乗車するときには、たいがい内心忸怩たるものがあるので傍から見れば単なる仏頂面のオッサンでしかないが、そんな疲れた巡礼者にも四国の運転手さんは概して優しい。
    • 距離やコースにかかわらず気持ちよく送り届けてくださるし、会話を絶やさず地元ならではの情報なども聴かせていただける。
    • 中には飴をくださったり、料金の端数分を「お接待です」と返して下さる方もおられる。もちろんその点だけではないが、優しい気持ちのこもった接遇には”感謝”の一言である。
  8. 道々行き会った地元の皆さん
    • 何度も書くが、巡礼の地である四国にはもともと”お接待”の文化があるので、地元の人たちは「お遍路さん」には寛容で優しい。
    • 特に年配の女性は、すれ違いざまにほとんど必ず会釈してくださるし時には声を掛けていただける。「御苦労さんです」、「雨やから滑らんように気いつけてな」等々、そんな一言だって気持ちのこもった”お接待”だ。
    • そこには巡礼者に功徳を託すという別の意味もあると聞くので、こちらも必ず一礼し改めて”お遍路”としての気持ちを引き締める。
    • そして、そんなときにはお遍路に来て良かった、日本人で良かったと心底思うのである。
讃岐に負けず劣らず伊予のうどんも旨い。茹でたての艶が食欲をそそる。

 

5_コアなエピソード
  1. 不安要素があった割によく歩いた
    • 前回と比べて今回は本当によく歩いた。前述のように自己ベストを更新できたことは嬉しいが、気候に恵まれたことと比較的平坦なコースだったことから、体力・脚力に関しては慢心しているわけではない。
    • 実は出発前には右足首に不安を抱えていた。歩くときの蹴り出す動作でくるぶしが痛むので、出発直前に整形外科で診てもらうと、関節の軟骨がすり減っているとの診断だった。加齢によるものらしい(ガックシ↓)。
    • なので、行程中は毎日痛み止めを飲み、冷湿布とテーピングで足首を養生して歩いた。長距離を歩き通せたのは、その3点セットが大きい。
    • もう一つ付け加えるべきは、四国お遍路の重要なキーワード「同行二人」である。巡礼者の傍らには常に弘法大師が居て一緒に旅して守ってくれるという意味であり、現地に立つとこれが俄かに信憑性を増し距離が伸ばせるから不思議だ。
    • 単なる「気は心」かもしれないが、パワーを持った先達が背中を押してくれると感じられるならそれはそれで心強い。兎にも角にも所定の目標を上回る距離と寺数を歩けたことに感謝である。
  2. 今回も道後温泉はスルー
    • 最終日に道後温泉で汗を流して帰るという目論見は、今回も計画倒れとなった。
    • 前回同様に松山着~松山発の日程だからその気になればできたのだが、行程表を作る段階での遊び心は、現地に入ると一寺でも先にという猪突猛進の気概に変貌する(単なるせっかちと言えないこともない)。
    • 何はともあれ当面の目標は巡礼結願なので、温泉や観光は後に家人Bと来る時まで楽しみに取っておくとしよう。 
  3. うどんの旨さ
    • うどんと言えば讃岐地方のソウルフードと思いがちだが、愛媛県もなかなか侮れない。巡礼中、昼食はうどんで通したような気さえする。とにかく旨い。
    • 写真編で紹介した久万高原のうどん「心」の釜揚げには感動したし、街道沿いにあるごく普通のチェーン店もハイレベルだ(瓢月)。
    • 「うどん」の由来について諸説ある中には、平安時代に空海が唐から日本へ持ち帰りまず四国に伝えたとする説もある。長い歴史と先人の叡知が凝縮された旨さなのだろう。
    • そういえば、歩いている途中で収穫前の麦畑をずいぶん見かけた。春が実りの季節なんて素敵じゃないか。
  4. iPhoneの活躍 
    • 今回は歩く距離が長かったこともあり、いつもに増してスマホのありがたみを実感した。
    • GoogleMapに目的地を入力して経路案内をスタートさせると最短経路と現在位置が表示され、それを辿ることで迷うことも無駄な遠回りをすることもなかった。iPhoneもまた素敵である。
    • 言い訳すると、その機能自体は知っていたが、頼りすぎれば人間本来の勘が鈍ると思い敢えて使っていなかったのだ。しかし、雨の降る夕方、巡礼コースから大きく外れた宿に向かう場面ではすごく助かった。蛇足だが、密封ビニール袋にスマホを入れることで、雨の中でも何ら問題なく使えることも分かった。
    • 名言風に言うなら、「これは、若者にとっては小さなことだが、昭和のオッサンにとっては偉大な飛躍だ(byニール・アームスットコドッコイ)」である(大汗)。

 

よく実った麦畑をあちこちで見かけた。これは大麦っぽい。

 

【まとめと今後の予定など】
  1. 今回は、正味4日間の行程で、予定した45番~56番の12寺に加え57番、58番、合計14か寺を回ることができました。
  2. コースと交通手段については、ほぼ事前の計画どおりに進み、歩行距離も想像以上に伸ばすことができたので、物理的な成果は充分に挙がったと言えます。
  3. その一方、終日雨の日があったり、一寺でも前に進みたい欲が強く出てしまったことなどから、各寺での参拝、納経などの作法と気持ちが雑になったきらいがあります。これは少し重めな反省点として次回以降に向け心に留めておくことにします。
  4. 次回は、残り30寺に向けて59番国分寺からスタートして65番三角寺で愛媛県内を参拝し終え、徳島県の66番雲辺寺を経ていよい最終4県目のうどん県、もとい香川県に入ります。
  5. コンセプトとしては、これまでと同様に「感謝の気持ち」、「出会いを大切に」、「多少の緊張感」の3点と、それに今回の反省を込め「初心回帰」を加えた4点とします。
  6. 残りの行程を大切にしながら、これまで以上に四国巡礼を堪能し、願わくば僅かでも人間を磨ければ・・・、そんな風に思っている次第です。

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