今回も高齢者界隈の話題。
シリーズ化するかもしれません(笑)。
先日、といってもすでに昨年ですが、タイトルの予防接種について「65歳の今なら費用助成があるヨ」と区役所から通知をもらいましてね。
その期限が3月末に迫ってきたので、近所の病院でワクチンの注射を打ってもらいました。
そして、病院を出て頭をよぎったのは……
そもそも「肺炎球菌」ってなに?
身の回りで「そのワクチンなら打った」とは聞いたことがないし……
なんだかよく分っからん!
……ということで、今回は少し勉強してみようと思い立ちました。
※ ちなみに本稿は、以下のサイトを参考にして書きました。
- (一社)日本呼吸器学会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(第3版 2019-10-30)
- (一社)日本感染症学会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(第3版 2019-10-30)
- (一社)日本プライマリ・ケア連合学会:こどもとおとなのワクチンサイト
- 国立病院機構宇都宮病院:呼吸器・アレルギー内科
- 肺炎予防.jp:気をつけて、肺炎球菌による肺炎
- 吉行病院:肺炎球菌について
- だて整形外科リハビリテーションクリニック:肺炎球菌予防接種のお知らせ
1.肺炎球菌とは
まず肺炎球菌とは……
- 肺炎のほか、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎、敗血症、髄膜炎ほかの原因となる細菌
- 肺炎レンサ球菌、肺炎双球菌とも呼ばれる
- 肺炎球菌は、高齢者が罹る肺炎の原因菌No.1(インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌を凌ぐ!)
- 健康人の鼻などにも存在し、体力や免疫力の低下で発症することがある
- 2014年から高齢者に対して予防接種法によるワクチンの定期接種が始まった
ふむ、あまり聞いたことはないけど、細菌のなかでも割と身近なものなんですね。
2.たちが悪い肺炎球菌
その一方、肺炎球菌ってやつは……
- 人体に棲み付いた菌が咳やくしゃみで飛散し、それを吸い込むことで感染が広がる
- 菌自体が莢膜(きょうま)という分厚い膜に包まれているため、人体の免疫からの攻撃に強く退治が難しい(⇐すなわち病原性が高い)
- 抗生剤が効かない耐性菌も存在し、肺炎球菌による感染症は重症化しやすい
インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌より知名度は低いけど、さすが肺炎のトップランナーを張るだけあって、なかなかたちが悪く手強い菌のようです。
3.ワクチン接種について
話をワクチンに戻します。
現在使われている肺炎球菌ワクチンは、「ニューモバックス(23価)」と「プレベナー13(13価)」の2種類とのこと。
実は、肺炎球菌には80以上の型があるのだそうです。
2種類のワクチンのうちニューモバックスはそのうち23種類(肺炎を起こしやすい菌の約80%)、プレベナー13はその名のとおり13種類(同じく60〜70%)の型の菌に免疫を作ることができます。
そして予防効果の持続性としては、3〜5年で低下するとされるニューモバックスに対し、プレベナー13にはより高い持続性があると言われていて……
ウ〜ン、そう聞くとどちらのワクチンが良いのか分からなくなりますね〜。
専門家や学会でも判断に揺れがあるようで、今のところはニューモバックスを法律により定期接種、プレベナー13は任意接種ということにして両者を併用することが推奨されています。
ワクチンの選択については、この資料↓の解説が一番解りやすかったです(PDF)。
◆ 2つの肺炎球菌ワクチン(国立病院機構宇都宮病院)
また、素人が気を揉むことではありませんが、使い分けの実態について調べてみたところ高齢者のワクチン接種に関するチャートがありました。
赤枠が法令による定期接種らしいですが素人には読みにくいチャートですし、そもそもニューモバックスとプレベナー、定期接種と任意接種の関係性や使い分けがよく分かりません。
そんなことを考慮してか今回の接種後に病院からこんなクレカサイズのカードをもらいました。
「5年経ったら忘れないでまた肺炎球菌ワクチン打ってくださいね」という意図のカードで、保険証と一緒に保管しておける親切な配慮だと思いました。
4.接種率の向上が課題
またその一方で、
2014~17年度における65歳以上の成人のPPSV23の接種率は30%代に留まっている
……とのことで、接種率を上げることが今後の課題として残されています。
個人的には、肺炎球菌による肺炎が高リスクの割に一般にはよく知られていないことが、接種率の低さの原因の一つのような気がします。
ちなみに2017年頃には、このワクチンを製造している企業が坂東玉三郎さんをキャラクターにして肺炎予防の啓発CMを打っていました(そのため一部では「玉三郎ワクチン」と呼ばれているらしい)。
歌舞伎役者・坂東玉三郎さん起用の新たなTV-CMを 2月25日(土)から全国で放映 「65歳過ぎたら、あなたもわたしも、肺炎予防」
せっかくある年令になると役所からわざわざ「肺炎球菌予防接種のお知らせ」が届くのですから、それに従って時間を作り財布を握って病院に行けばいいだけです。
肺炎で辛い思いをするより、一回だけチクッと痛い思いをすればリスク回避できるし、費用の公的補助はあるし、これはぜひ受けたほうが良いですね。
(自己負担は自治体によって多少差があるようです。筆者の場合は4,000円でした)
5.まとめ(落語風に)
- (八五郎)
- するってえとなんですかい?ご隠居さん。
ワッチらは、いつ何時暴れだすかも分からねぇマッチョで厄介なヤツを、後生大ぇ〜じにドンブリに仕舞い込んでる、ってぇわけですかい? - (ご隠居)
- ……まあ左様じゃな。
- (熊五郎)
- そいつぁ、てーへんだ!
- (ご隠居)
- まあまあ八つぁん、熊さん、聴きなさい。
- 肺炎球菌てやつは、ことほど左様にたちの悪いヤツでな。いくらお上のご意向でワクチンとやらを打ったからといって決して安心してちゃぁいけないよ。
-
- まず、他人様からその悪玉を貰わないように、世間様にばら撒かないようにするってぇことが大事だ。
- 人前でクシャミするときは、手ぬぐいなんぞでしっかり口を押さえる。毎日の歯磨きも大切だよ。
- そして身体の免疫力でそいつを退治できるように、早寝早起きして三度々々きちんとおまんまをいただいて、そして真面目に働いてお天道様に当たることだ。
それからタバコはやめたほうがいい喉に悪いだけじゃなくって、百害あって一利なしだからな。
- (八、熊)
- エッ、タバコはダメですかい?
- (ご隠居)
- タバコなんざぁ、せっかく働いて稼いだ給金をドブに捨てるようなものだ。
同じ捨てるなら、キュウキンはキュウキンでも肺炎球菌の方にしなさい。
おあとがよろしいようで。