最近読んだ本_2019/08

8月は2冊。

  • オリンピックのテストイベントいろいろ行われる
  • あおり運転史上最高のスター登場、群がるマスコミ
  • 韓国との関係、悪化の一方
  • 九州、四国を襲う豪雨、台風
  • (個人的には)四国お遍路、7回目の区切り打ち完遂

世間的にも個人的にもいろいろあった夏でした。

 

 

荻原浩「母恋旅烏 (双葉文庫)」★★★☆☆
ユーモア小説から芥川賞作品まで幅広い執筆を展開する著者の異色作。
夢ばかり大きな元旅芸人のダメ父ちゃんが、極貧にあえぐ家族を率いてレンタル家族業で起死回生を図ろうとする。しかし昔取った杵柄を忘れることは出来ず大衆演劇の世界に戻るも、団員の造反、大師匠の倅との確執、挙句は母さんの出奔等々で思うようには行かない。
そんな中で家族は付いたり離れたりを繰り返しながら徐々に結びつきを強め、ちょっと心の弱い次男の寛二くんは、ゆっくりではあるが役者魂を芽生えさせて行く。
前半のレンタル家族の部分は後半への伏線の仕込みなのだろうが、必然性があまり感じられず首を45°くらいに傾けながら読み進めた。
タイトルが生きてくるのは後半で、大衆劇団の大看板かつ祟りを恐れられる演目と、居なくなった母への思いという二重の意味が込められていることに思い至って、(あ、あ~)と嘆息し改めて著者らしさを感じるのだった。
・・・とはいえ、長女桃代の半端ないブッ飛びぶりを生かし切れていなかったり、終盤で突然家を出てしまう母美穂子のバックグラウンドが謎のまま終わったりして、著者の作品としてはややまとまりに欠け詰めが甘い印象だった。

 

 

佐々木閑「科学するブッダ 犀の角たち (角川ソフィア文庫)」★★★★★+★
いやはや、たいへんな本にめぐり合ってしまった。私にとって文句なしの良書だ。
仏教学者である著者は、本書の中で物理学、進化論、数学などのいわゆる科学全般と、一見何のつながりも無さそうな仏教を、「パラダイムシフト」と「人間化」という独自の視点から対比して論じる。
そして、釈迦が創設した初期の仏教は、神秘性をほとんど認めない合理的なもので、科学の進歩によっていずれは双方は同じ土俵に乗り、やがて仏教は科学の力によってパラダイムシフトを経験することになる、と期待を込めながら結論づける。
また曰く、釈迦の仏教は数多ある宗教には珍しく絶対神を認めず、瞑想という修行により自らの努力で悟りを得ようとする、ある意味「正しい人間の生き方」を示すものである。それが宗教と呼ばれるのは、「悟り」そのものに理論付けや具体的な方法論の明示がなく、唯一そこに神秘性が担保されているからだ。
・・・なんと明快で鋭い考察ではないか。明晰な頭脳、深い洞察力、真摯な探求のなせる技だ。
私が著者に強く惹かれるのは、難解な話を平易な言葉使いと親しみを込めた表現で分かりやすく語ってくれるところが大きい。
前半で語られる相対性理論、量子力学、ダーウィンの進化論、超限数などの科学史はワクワクするほど面白くて、その部分だけでも読む価値は充分にある。
本であれば読者、講演なら聴衆に対して上からではなく、対等な立場に立ってこの上ないインテリジェンスを授けてくれるのだ。
誰にでもお勧めできるわけではないが、科学や仏教に少しでも興味があるなら、必ずや得るものがあると断言できる本だった。
これだから読書はやめられない…

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