永遠の出口

題名
永遠の出口
著者
森絵都
あらすじ
 両親と姉の四人家族で育つ主人公岸本紀子。どこにでもいる女の子の日常と小学校から高校卒業までの成長過程を通して思春期の揺れ動く心や焦り,淡い心情が9章の連作集に描かれる。 第6章「時の雨」は夫婦の危機を繕うとする姉妹を描いて秀逸。
 父親の浮気から危うくなった両親をおもんぱかり,姉景子の発案で温泉旅行に出かける岸本一家。関係修復を願う景子の気遣いをよそに歩み寄りの兆しすら見えない父と母。不安を抱えながらも為すすべない紀子。しかし長年連れ添った夫婦の機微,大人の心根は高校生と中学生の想像を遙かに超えたところにあった。
 2004年本屋大賞第4位。
お勧め度
★★★★☆(4/5)

 誰もが経験しているにもかかわらず,ある時期になると忘れてしまう青春期の不安と葛藤。大人にはこの気持ちは解らない,などと思いつつもその”大人”に一歩一歩近づいて行ってしまう焦り。

 紀子が小学校から高校で過ごす永遠とも思えるような時間が各章ごとに鮮やかな断面に切り取られていきます。級友との誕生会,子供だけの遠出,非行と万引き,アルバイト,恋愛とデート,卒業と別れ・・・。読んでいてああ,こんなこと,あんなこともあったなと,懐かしくも自分の学生時代が思い起こされました。「時の雨」は何だか身につまされてホロっと来ましたし。

 紀子の父親のようにどっしりと構えていたいと。別に浮気しているわけじゃありませんけど。 重たいミステリーやサスペンスに疲れたときに読むと心にしみる一冊。エピローグもしゃれています。元気をもらいました。

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