最近読んだ本_2021/10

今月は3冊。

仏教系に偏りました。

実はいま、WordPressで使っているテーマがちょうど「Nirvana」涅槃なんです。

なにかの縁かな(笑)

 

 

1.原田マハ「翼をください 上下 (角川文庫)」★★★★★+★

 

日米開戦前夜とも言える1937年、一人のアメリカ人女性パイロットが赤道上世界一周飛行の途中、南太平洋上で消息を絶った。

その2年後、世界に先駆けて7人の日本人が純国産飛行機ニッポン号で世界一周飛行を見事成功させ、日本中を歓喜させる。

 

この二つを史実を感動的なアイデアで結びつけ、当時の政治、軍事状況を絡めながら冒険とロマンスの見事なファンタジーに仕立てた。

物語は、新聞記者の青山翔子が単身アメリカの片田舎に出向き、社内の伝説的なカメラマン山田順平を取材する体で進む。

 

山田は青山の問いかけに、空を見上げながら勇敢で真のパイロットだったエイミー・イーグルウィングを語りだすのだった。

  

 

これ読んで泣かない人はいないでしょ、という感動作だ。

片田舎アチソンのホームを訪ねた青山に、引退した山田は「エイミーの話を訊きに来なさったんだね……」と壮大な物語を語り始める。

 

アインシュタインや山本五十六の登場にも驚くが、やはり当時も今も変わらない空を飛ぶことへの人間の情熱と努力に胸を打たれた。

著者はもちろんのこと、企画、編集スタッフの力量あってのことだが、飛行機の技術や歴史についてよく勉強していることにも感心した。

 

エピローグには50数年ぶりの民間開発旅客機MRJが登場する。

敗戦によってプツリと途切れた日本の航空技術の再興に想いを巡らせる仕掛けであり、そこでも高齢読者の琴線はブルンブルンと掻き鳴らされるのだった。

文句なしの5プラス1星。

 

 

 

2.藤田一照・山下良道「アップデートする仏教 (幻冬舎新書)」★★★★★

 

この本に出会わなければ、これさえ読まなければ、この世の真実を知らず墓場に行けたのに……と本気で思った。

 

対談しているお二方はもともと曹洞宗の僧侶だ。

共通するのは、日本の大乗仏教の分厚い伝統と膠着した現状に埋没することなく、仏教の最前線をアメリカやアジアで目の当たりにし、自らも進んで身を投じ多くのものを吸収して日本に戻ってきていることだ。

 

そして本書の対談で日本の仏教を1.0、2.0、3.0に分類し、あまりに形骸化し形だけに成り下がっている現状から、本来の姿である人のための仏教、心の病院としての仏教にアップデートする必要があると結論づけている。

1.0から3.0の分類に我が意を得たりの思いが強かったが、詳細は省略する。

 

核心を言ってしまおう(早い話ネタバレです)。

山下氏が提唱し藤田氏が理解を示すワンダルマ・メソッドによる瞑想を実践することで、出家して修行することなく誰もが涅槃(ニルヴァーナ)を体験できるというのだ。

2500年前、釈迦が苦行の末にたどり着いた菩提樹の下で瞑想し獲得した悟りの境地、真理の発見は、伝説や夢物語のように縁遠いものではない。

今、世界の仏教界では、もっと整理された現代の方法論に基づく「瞑想」が、立派に人の心の特効薬として注目され広まっているという。

日本は、どうやら置いてきぼりになっているらしい。

 

それにしてもすごいではないか、釈迦の悟りに至る道が一般人にも開かれているとは。

最近よく耳にするようになった「マインドフルネス」も、宗教色のあるなしや程度の差に関わらずほぼ同じ流れに属するらしい。

ある面で形骸化が行き過ぎた伝統的な宗教に嫌気が差した欧米人が禅に着目し、より実効性が期待できる瞑想に再認識が深まったと本書で二人は語る。

その流れは理解できたし、改めて日本の仏教界のガラパゴス化に思いは飛ぶ。

 

知ってしまった以上、この先なにがあるのか、どこまで進めるのか皆目分からない中で「現代の瞑想」というものを実践してみたくなった。

定年後仏教に興味が湧き、本を読んだりセミナーを聴講し始めて約5年。

日本の伝統仏教にどことなく違和感を感じていたし、そうかと言って初期仏教やテーラワーダは、どこに接点を求めればいいのか分からなかった。

 

その意味で、本書には新しい扉を開けて方向を示してもらった。

大乗の中でも曹洞宗、臨済宗の座禅に釈迦の悟りとのつながりを感じていたことにも理屈付ができそうだ。

さて、扉の先に何があるのか。

仏教への興味と好奇心は尽きない。

 

 

 

3.山下良道「本当の自分とつながる瞑想 (河出文庫)」★★★★★

 

前書で知った瞑想の実践編だ。

著者が提唱するワンダルマ・メソッドによる瞑想を分かりやすく解説している。

わかり易い説明ながらさすが曹洞宗がベースの著者は、釈迦が拓いた仏教、いわゆる初期仏教のコンセプトを軽くさらっと織り交ぜる。

このあたりは、定年後に勉強した知識と一致してストンと落ちてきた。

 

釈迦が拓いた悟りの境地……

普通に考えれば、出家して厳しく辛い修行を長年続けた末に到達できるかもしれないもの、到達どころか本当にあるのかどうかすら分からないもの……というイメージだが、そのハードルを極端に下げて、釈迦本来の仏教の教えを一般人に馴染みやすいものにしようと活動しているのが著者だ。

そして本書は、著者が提唱する瞑想の極めて分かりやすい入門編で、自らも救われた瞑想の方法論が解説されている。

当然ながらこの本は入り口で、本当の奥行きは想像もつかない。

 

でも今はドアを開けて、その世界に一歩踏み出してみたいと思っている。

これを実践して何が起こるのかは分からないし、何も起こらず諦めてフェードアウトするかもしれないが、取り敢えずその気にさせられた……

そんな本だった。

 

 

 

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