今月も一応5作品。ほとんどが通勤電車の中で読むので、仕事の忙しさと読書量は関係ないはずなのだけど集中力は落ちてます、確実に。もう3月だよ。
- 関口尚「パコと魔法の絵本」★★☆☆☆
- 大人のためのおとぎ話。記憶障害を持つ少女パコを巡って、医師やナース、入院患者たちが泣かせるストーリーを展開する。映画にもなったらしいですね。でも何だか物足りなかったな~。
この手の小説は、どの程度感情移入が出来るかで評価が決まるのでしょう。実質的な主人公の乾固ジジイ大貫をビジュアル化すると、いしいひさいちのののちゃんに出てくる町内会長になりますね。もう一つ「ワがマママン」 - 逢坂剛「さまよえる脳髄」(判定外)
- 三分の一ほどでギブアップした。よって★評価はなし。傷害、殺人、倒錯した性の描写に辟易してしまった。
- 北村薫「玻璃の天」★★★★☆
- 本作で明かされる謎の女性運転手(妙な単語だ)ベッキーさんの出自。う~む、そういうことか。
名家の令嬢花村英子とベッキーさんの背景には、昭和初期という華やかさと暗さの入り混じった時代が描かれています。早く完結作の「鷺と雪」が文庫にならないかな。新刊本は重くてかなわない。 - 浅田次郎「憑神」★★☆☆☆
- 貧乏侍の別所彦四郎がふとしたことから貧乏神に取り憑かれ、御徒組の名門別所家は百姓町人へ陥落の危機に。ところが災厄はそれだけでは済まなかった・・・。
「ジェットコースター時代劇」とでもいうべき速い展開で、作家に期待する分だけは面白い。面白いのだけど深みが足りないというのか、テーマがはっきりしないし、彦四郎が何をしたいのか最後まで良く分からない。ということでちょっと厳しく星二つ。 - 藤原伊織「蚊トンボ白鬚の冒険(上)、(下)」★★★★☆
- 週刊誌に1年2ヶ月に渡って連載された作品だけに読み応えは充分。
蚊トンボが脳に寄生して超人的な能力を持つこととなった水道職人の活躍を描く、と書くとSF小説のようだけど、経済、ヤクザが絡む立派なサスペンスものなのです。登場人物が皆、クールかつ頭脳明晰で読んでいて気持ちが良い。筋を通すヤクザの瀬川も魅力的なキャラクターだし。作者の早世が惜しまれます。