2020最後の書評です。
今月は、1冊しか読了できませんでした。
仏教系の本は読むのに時間がかかる(睡魔との戦い)、師走という気忙しい時期(大掃除、年賀状、お金の精算等々)、引き込まれる本になかなか出会わない等々の言い訳はありますが、今月はなんやかんやで生活パターンが一定していなかったのが大きいかもしれません。
心身ともに安定してはじめて本の世界に没入できると思うのです。
魚川祐司「講義ライブ だから仏教は面白い! (講談社+α文庫)」★★★★★
著者は、1976(昭和51)年生まれ。東京大学でインド哲学・仏教学を専攻し、卒業後にミャンマーに渡りテーラワーダ系の仏教を研究、実践した方で、自らは仏教徒でないと公言している。
本書は、著者が2015年に刊行した「仏教思想のゼロポイント」のイントロ編で、仏教初心者との対話形式で釈迦が啓いた本来の仏教を易しく(あくまで著者のレベルで、だが)解説している。
「…ゼロポイント」の方は一年ほど前に読んでいるが、私には本書の方が分かりやすくて馴染めた。
- ブッダは弟子に「異性とは目も合わせないニートになれ」とかなりヤバい教説を説いていた
- 実践して得るものがなければ、そんなヤバい宗教が2500年も続くはずがない
- 輪廻転生の本質とはなんなのか
- 悟った人が日本にほとんど表れない理由
- 「悟り」とはこういうもので、そこに至る方法論は実は確立されている
上記のようなことを噛み砕いて丁寧に説明されているので、私のようなものでもなんとなくイメージが掴めるような気がして、かなり集中して読んだ(だから眠くなる)。
とはいえ、さらに疑問が湧いたのも正直なところだ。
- 労働や生殖を否定するブッダの教えが本気で普及したらどうなるのか
- 修行のプロセスを経て悟りを開き解脱した後は別人格になってしまうのか
- 悟った人が通常の社会生活を営むことはできるのか
- 悟っていない状態に戻ることは出来るのか
- 日本で悟っている人は、具体的に誰なのか
上級者からすれば下世話な疑問かもしれないが、石橋を叩いて足元を固めてはじめて前に進むことができるのだし、凡人が実践した場合にどうなるのか知っておかねば危ない。
そういう意味でテーラワーダやヴィパッサナー瞑想の方向、言い換えると、最近ようやく日本でも注目されるようになった仏教の一分野にもう少し入り込んでみたいと思っている。
…ということで、今の私にはとても興味深い一冊だった。
これで2020の書評は終わりです。
お付き合いくださいってありがとうございました。