生者必滅 会者定離
昭和一桁のいまだ矍鑠たる叔父が、法事の挨拶に必ずと言っていいほど挿むこの言葉。
出典は仏教のお経、遺教経(ゆいきょうぎょう)で、平家物語が引用するほどパワーのあるイディオムだ。
なるほど誰にでも分かり易いし、前後半を分けても重みが失われることはないので、サラリーマンが朝の三分スピーチに織り込んでポイントアップを狙うには最適……、などと不遜なことを考えるほどポピュラーな慣用句と言えよう。
この世に生を受けたものは必ず滅び、出会ったものは必ず別れる運命にある。
直訳すれば至極真っ当で当たり前の理屈だが、ふと立ち止まって考えるとその深さに震撼する。
仏教を少しだけ齧って覚えた「諸行無常」と同一線上、あるいは内包される言葉ではないだろうか。
思い起こせば「諸行無常」の概念を知る前は、叔父の流暢な挨拶を聴いても「生者必滅・・・」が耳に残ることはなかった。
60歳過ぎの手習いも、あながち無駄ではないようだ。
……こんなところでドヤ顔してどうする。
閑話休題
二つの言葉に共通するのは、
- 必ず滅んでしまう…
- 必ず離れてしまう…
- 必ず変わってしまう…
「だから諦めよ」ではなく、
「だからこそいま生きていることを、そばに居る人を、まさに今この時を夢々疎かにするなかれ」とのメッセージだ。
それが真の意味であり、そこに強く共感するし、またそうありたいと願ってもいる。
然るに我輩は、依然として過去を引き摺ってクヨクヨしたり、要らぬ取り越し苦労をやたら重ねる未熟者、鼻垂れ小僧だ。
◆ いつまでたっても心配の種は尽きず / まったく親ってやつは
そんな若輩が名言に触発されて「将来そうなりたいでーす」などと願うこと自体、すでに今のこの刹那を疎かにしていると言えやしないか……
……オホン
あれこれ考えていたら別の諺が浮かんできた。
「下手の考え休むに似たり」
いずれにしても、今は一人住まいの叔父のように枯れたり練れたり落ち着いたりするのが相当先なのは間違えない。
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