建設工事現場のガードマン。
ヘルメット・作業服で,ダンプカーなどが出入りするゲートに立ち,ホイッスルや手旗で交通整理をしてくれる人ですね。
私が担当している,ある工事現場に,とても元気の良いガードマンさん(仮名Aさん)がいます。Aさんは,毎日,その現場のゲートに立ち,大きな声,大きな身振り,手振りで「ハイ!ダンプカー,出まぁ~すっ!」,「ハイ!どうぞっ,お通り下っさぁ~いっ!」と,とても気持ちの良い仕事をしてくれています。
Aさんは,見たところ30歳くらいで,格闘技が似合うような立派な体格のわりに,表情はいつもにこやか。若い頃は,剣道に相当,入れ込んでいたそうで,「気合で声が大きくて,すいませぇ~ん!」と,交通整理の時と同じ声で,熱く私に語ってくれました(耳が痛かったよ)。
Aさんの雇い主であるゼネコンも,「現場が引き締まる」と,彼の仕事ぶりを高く評価していましたが,その一方では,時に必要以上の声を張り上げるAさんに,痛し痒しの念を抱いているという面もありました。
あるとき,ゼネコンの担当者が聞いたそうです。「Aさん,何でそんなに大きな声で交通整理をするの?」。Aさんは曰く「大きな声は,私のポリシーです。自分なりに,道路を通行する皆さんや工事車両の安全を考えているのです。」
今日,その現場に行くと,Aさんはいつも通りゲートに立っていましたが,心なしかいつもより声が小さく,背中が丸まっているように見えました。何かあったのかと,担当者に聞くと,「いやぁ~,近所のお店から苦情が来たんですよ。Aさんのデカイ声で客がビックリするって。」
世の中,むずかしいものです。良かれと思って一生懸命にやっていることが,時には仇になることもある。私は,Aさんが,世間の風と自分のポリシーにどこかで折り合いをつけて,早く元気になってくれることを祈ったのでした。
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