カオ・プラ・ビハーン遺跡


もう6年前になりますが,タイに滞在中に地方都市をいくつか廻りました。そのうち東北(イサーン)地方のウボン・ラチャタニーに行ったときに日曜日を利用して訪ねた「カオ・プラ・ビハーン遺跡」は私にとってはとても思い出深い場所です。この遺跡は入り口がタイ国側,遺跡そのものは国境を越えたカンボジア側にあるため,かつては国境紛争で戦闘の舞台になったこともあって,今でも大砲や墜落したヘリが放置されていたり,撤去されない地雷が残っていたりと(帰ってきてから聞いた!),平和慣れした日本人には想像外の場所に立地しています。


ウボンの街から車で1時間半ほどいくと遺跡へ登るゲートに着きます。この遺跡の本堂(?)は標高約650mの山の上に立っているのでゲートからは石の階段を延々と登らなくてははなりません。私自身が撮った写真が少ないのと遺跡の紹介はこちらのサイト(タイは若いうちにいきなはれ)に詳しいので詳細は省略しますが,頂上の本堂の裏は断崖絶壁でその先は見渡す限りカンボジア北部の大平原が広がっていました。まさに180°の大パノラマ,地球の丸さが分かるという表現が決して大げさではありません。ところどころ,煙が上がっているところには人が住んでいるのでしょうけれど,カンボジア側からはこの遺跡に近づくことは出来ない,という一緒に行ったタイ人の説明が実感できました。

ところでこの遺跡が印象深い理由がもうひとつあります。それは入り口ゲート付近からいつの間にか現れて,私達に付いて来た男の子,プラ君と出会ったことです。プラ君は年を聞くと5歳,汚れたシャツと半ズボン,サンダル履きの足も薄汚れ,汚い手には10枚位の絵葉書を握っています。でもとてもかわいい子で,手にした絵葉書を見せて「50バーツ,50バーツ」と呟きながら付いてきます。「いらない」と言うと片腕で顔を覆って泣きだしてしまいました。ただしこれは泣きまねで,こちらが悪いことしちゃったかな~と思っていると突然,真顔に戻ってまた「50バーツ,50バーツ」と始めます。暫くすると途中からもうひとり,別の男の子が合流し,何を始めるかと思えばお互いに持っている絵葉書のけなし合い。「俺のは綺麗なのばかりだ,おまえのはダサイ!」「うるせー,オマエのは手垢で汚れてるじゃねーか!」といったところでしょうか。「もういい加減,帰れ!」とこちらも半分面白がって言うとまた泣きまねが始まり,そんなことを繰り返しているうちに頂上についてしまいました。休憩している私達の周りを離れずに「50バーツ・・・」を繰り返し,決して帰ろうとしません。こちらも根負けして数枚買ってあげると一目散にゲートのほうへ走って見えなくなってしまいました。受け取った絵葉書はしっかりと手垢で汚れていましたが・・・。


プラ君がどんな暮らしをしているのかは想像するしかありませんが,彼はきっと家族の中でも立派な働き手なのでしょう。どこかで絵葉書を仕入れ,観光客の中でお金を持っていそうな輩を見つけると自分の商品を見せて営業し,時には相手の気を惹く演技もし,買ってくれるまでは決して傍を離れず,小さな体で大人と同じペースで急な石段を昇り降りします。5歳といえば日本では幼稚園児。国情の違い,生活習慣の違い,貧富の差,いろいろなことが私の頭の中を去来しましたが,お金を受け取ったあとに彼が見せた笑顔は崖の上から眺めた景色と共に私の心に残りました。

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