8月は、仏教関係の本1冊だけでした。
実はあと1/4ほど残っているのだけど、小説のように最後まで読まないと、ってことはないので書いちゃいます。
写真とは裏腹に固い話ですけど、我慢して読んでいただければ幸いです。
- 中村元「原始仏典」★★★★★
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本書では、原始仏教(初期仏教、根本仏教とも言う)の数多ある経典の中でも割とポピュラーな「スッタニパータ」、「ダンマパダ」などから、佛陀の教えのエッセンスを東大名誉教授にして仏教学者だった著者が、この上なく平易な言葉でそれは分かり易く解説している。
それもそのはず、テレビやラジオでの連続講義を書き起こした2冊の書籍からさらに抜粋したものだ。
仏教の開祖である佛陀は、出家ののち厳しい修行を経て菩提樹の下で悟りを得、人としての生き方、人生の中で大切にすべきものなどを人々に説いてまわった。その教えが文字となって後世に伝えられたものが仏教である(アワワッ、そんなに簡単にまとめていいのか)。
絶対神と人間という二元性を持つユダヤ教、キリスト教、イスラム教との対比では、佛陀及び仏教は世界を創造した神を認めていない。あくまで悟りを開いた人間が、悩み迷う人間の立場に立ってその心情を斟酌し、より善い道、より善い生き方を示すという極めて人間的な宗教なのだ(ちなみに佛陀は、80歳にして食中りで亡くなっている。人間臭さの極致ではないか)。
すなわち本来の仏教とは、多くの日本人(私を含む)がイメージするであろう葬式及び死者のためだけのものではなく、若輩の暴言が許るされるなら、人間佛陀が悩める人々に向けて語った「人生哲学」と言えるのではなかろうか。
以下は、書評というより愚痴になってしまうのだが・・・
3年前に本格化した四国巡礼をきっかけとして仏教について勉強したくなり、これはと思う本を乱読し始めた。そして昨今は、その幅広さ、奥深さが見えて来るに連れ、却って混乱するという悪循環に陥っている。
知れば知るほどたくさんの教義、経典、宗派があり、また各々にはたくさんの解釈や考え方がある。約2600年の歴史も奥深く複雑で、その流れの中で派生した部派、宗派も数限りない。
日本に入ってきた仏教は、経路的にインドからシルクロード〜中国を通ってきているし、言語的にも何段階かの翻訳を経ている。伝言ゲームではないが、その間に細かなニュアンスや意味するところも変わって当然だろう。
一言でいえば掴みどころがない、もとい掴みどころが見つかるまでが大変なのだ。
そうかといって仏教は難しい、分かりにくいと匙を投げたわけではない。日本で主に広まっている大乗仏教及びその歴史や宗派はもちろん、本書に現されているような仏教の原点にも逆に興味がわいて来た。
本書に書かれた原始仏教における佛陀の教えの中では、以下の点に特に心惹かれた。
- 相手の立場で考えること、他人の立場に立って行動すること。これが世の中で一番大切なことであり、世の中が円満に進んでいくための実践上の原理でもある
- 現世は見えるだけの領域だが、我々は現世を超えた広い深い見通しの中に置かれている。だから功徳を積めば自ずからその徳は目に見えないところで生きてくる
また、本書からは離れるが、高名な物理学者アインシュタインの以下の言葉にも、実は以前から興味がわいている。
- 生きる意味とはなにか? その質問に答えるのが宗教である
- 現代科学に欠けているものを埋め合わせてくれる宗教があるとすれば、それは仏教である
私の残りの人生の中で仏教の深遠な世界にどこまで踏み込めるのか、どこまで探究し理解できるのかは皆目見当もつかない。それでも今のところ知れば知るほど心のどこかに開いた穴が少しづつ埋まっていくのが感じられるし、その感覚が続くうちは本書の様な良書で勉強を続けたいと思っている。