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最近読んだ本_2011/03
- 鈴木光司「楽園」★★★★☆
- 本書に収められた紀元前、18世紀、現代の3つの物語の底辺に流れるのは愛。離れ離れになった男女が1万年の時間、空間、世代を経て再会するまでを描く壮大な連作小説で、作者のデビュー作にして第二回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作である。
現代編はやや強引な感があるものの全編にわたる重厚な語り口は、翻訳小説と言われても私は信じてしまうだろう。「リング」シリーズでホラーのイメージが定着している作者を見直した一冊。
- 松久淳,田中渉「天国の本屋~恋火」★★★★☆
- シリーズ第3弾。アロハシャツの怪しげな店長ヤマキにHBS(ヘブンブックサービス)に連れて来られた売れないピアニスト健太。自分のスキルに嫌気がさしていた彼は,アルバイトの途中でかつて憧れた女性ピアニストに偶然再会し次第に自信を取り戻して行く。
一方,地上ではさびれた商店街の飴屋の娘香夏子が,地元にかつての賑わいを取り戻そうと花火大会開催のために奔走していた。はたして伝説の「恋する花火」は復活するのか。
今度はこのパターンか・・・、と途中から先の展開が読めてしまうけど,半分予想、半分期待したとおりに泣かされて読後は暖かい気持ちになっていた。疲れた心のひび割れにジワッと染み込んでくる上質の物語。
いつもながら田中渉さんのイラストは,この本の雰囲気とストーリーにピッタリですてきです。
- 奥田英郎「ララピポ」★☆☆☆☆
- 6話の連作小説で,社会から孤立した、あるいは孤立したと思い込む人々が次第に追い込まれて行くさまを描く。
・・・がしかし,作者の意図したものが何なのかよく分からず,6話とも○。○○が前面に出てくるので途中で辟易した。
タイトル「ララピポ」の意味は第6話でやっと示されるが,それとてこの小説に深味を与えるものではない。この作家にしては珍しい駄作。
- 垣根涼介「ギャングスターレッスン」★★★★☆
- 「ワイルド・ソウル」と「サウダージ」の間を埋めるヒートアイランドシリーズの第2弾。2冊の大作に挟まれてどちらかといえば間奏的で軽い仕上がりだが,ブラックマネー強奪団の強者柿沢,桃井の中間に加わろうとする若者アキの成長譚として読めば充分に楽しめる。
武器の調達,ヤクザとの対峙,立ち回り・・・,どのシーンをとってもクールな柿沢と人間味のある桃井の対比が心地よい。