コロナ禍点景_2020/10

今回は、一昨日の通勤時、路線バスの中の出来事を語ります。

コロナがらみの話です。

 

1.その日その時の状況

  • 外は雨。台風の接近でそこそこ強い降り。
  • バスは、始発駅を出て2車線の道路を走る。
  • 車内の座席はほぼ埋まっている。
  • 密閉対策の窓開けは、雨のためやや小さめ。
  • 通路を挟んで筆者の反対側に、中年サラリーマン(仮称Mさん)と中年女性(仮称Fさん)が前後に座っている。

 

 

2.車内からレポート

 

こちら現場です。

 

バスの揺れに目を閉じかけていた筆者の耳に、突然、鋭い声が突き刺さって来た。

「アァッ!、閉めないで!!」

 

自席の横の窓を閉めようとしたMさんの挙動に、後ろに座っていたFさんが鋭く反応したのだ。

一瞬、車内に緊張が走る。

 

「・・・・・・」

無言で窓ガラスにかけた手を元に戻すMさん。

ここで動きは止まり、このまま終息かと筆者を含む車内の乗客は思った。

 

しばらくのち、Mさんは依然吹き込んでくる雨に閉口した様子で、再び窓を閉めようとした。

そこに間髪おかず、

「閉めないでッ! コロナになっちゃうからッ!!」

と、再びFさんから絶叫に近い声があがる。

 

通路越しのほぼ真横にいる筆者は目をむいた。

(窓を締めると、即刻コロナに罹っちゃうのか?)

たぶん他の乗客も声は出さずとも驚いたのではないか。

 

ここまで来て、さすがにMさんも説明が必要と思ったようだ。

おもむろに後ろを振り向き、Fさんに、

「雨、入って来るんで……」

と言いながら窓をピタリと閉めた。

 

今度はFさんからどんな反応があるかと乗客一同、固唾を飲む。

ちなみにMさんの言動、振る舞いは、極めて常識的で紳士的だ。

 

一瞬の沈黙のあと、Fさんから発せられたのは、

「あ、あぁぁ〜〜・・・」

と、ため息とも何とも言えない尻すぼみの一声だった。

 

Mさん、Fさんのバトル、もとい、やりとりはそこで終わる。

 

その後も雨の2車線道路を走り続ける路線バス。

車内には、湿ってモヤっとした空気だけが残った。

 

・・・エー、現場からは以上です。

 

 

3.切ない感想

最後のFさんの「あぁ〜」は、消え入るような声でしたが、すぐ近くにいた筆者には、ヒシヒシと伝わって来ました。

内から湧き上がる怒気とも嘆息ともつかぬエネルギーに蓋をしつつ、(そう……、それなら仕方ないわ……、本当は怖いんだけど諦めるわ……)と密かに嘆く心の声が。

 

その瞬間は、大きな声を出すWさんが大人げなく見えたものの、筆者はその後だんだん切なくなりました。

かれこれ8ヶ月にも及ぶ日本のコロナ禍が、世の中にいかに広く深く影を落としているかを、現実のカタチとして見てしまったからです。

 

高い意識を持つことや我が身を守ろうとすることを否定するつもりは、ありません。

でもその一方で、世の中の多くの人の内側に溜まるもの、溜め込むものの大きさと、その温度差たるや…

 

人それぞれの境遇や置かれた状況、立場はみな違うし、心中に溜まるものの多寡や強弱には当然、個人差があります。

でも、その溜まっているものが何なのか、どんなものなのか、いつ、どんなカタチで溢れ出て来るのか、それとも自然に消えてしまうものなのか。

 

それらを、おそらく誰もがよく分かっていない。

筆者は、そこに切なさと、同時に悔しさと怖さをも感じるのです。

 

 

4.まとめ

ここまで来てウイズコロナ、アンダーコロナなど、嬉しくない言葉が世の中に定着しかけていますね。

 

いつまで続くのか分からないこの状況の中でも、極端に走ることなく常に平常心で居たいものです。

  • マスク、手洗い、消毒は、「日常ルーチン」だ。
  • 世に言う三密は、極度に恐れず「なるべく回避」する。
  • テレビのその筋の報道、ワイドショーは、「チラ見」に限る。
  • 万が一のときを「ゆる目にシミュレーション」しておく。

 

各自、何をどれくらい溜め込んでいるのかよく分からない中で、筆者はこの頃そんなことを、あくまでゆる目に心がけています。

新参者のウイルスのせいで、自分でも意識しないうちに切れたりしたら悔しいですからね。

 

 

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