焼き鳥の思い出(2)

焼き鳥の思い出(1)」の続きです。

その「福助湯」が風呂釜の改修工事で1箇月ほど休業したことがありましてね。仕方がないので徒歩で10分くらいの「小沼湯」に通いました。その風呂屋に行く途中のちょっとした空き地に焼き鳥屋が店を出してたんですよ。小さな屋台の前に椅子を並べて客側をシートで覆い、炭火で鳥串を焼き、夕方になるとカーバイドのランプを灯して酒を出すような、昔ながらの屋台でした。

風呂上りにその屋台のそばを通ると、肉の焼ける匂いと酒飲みの匂いがしましてね。

当時、決して裕福とはいえない下町の建具職人の家庭では、焼いた肉なんてめったに食べることはなく、また父は筋金入りの下戸だったので、小学生の私にはそれが何の匂いなのか、シートの中でザワザワと何が行われているのかはまったく分かりませんでした。

父に1本買ってもらったとき、
「あそこでなにしてんの?」
「焼き鳥屋だ」
「焼き鳥って?」
「食べてみるか」
そんな会話があったことでしょう。

初めて食べた一串の焼き鳥のおいしかったこと。

頬張ると耳の下が痛くなりるような肉の旨み。それによく合う甘辛いタレ。湯上りで味覚が鋭かったのかもしれません。ひょっとするとわけの分からない臓物だったかもしれません。世の中にこんなに旨いものがあったとは・・・。家まで10分の道のりで、肉片を飲み込んでしまうのが惜しくて惜しくて。子供心に感じたあの味覚は、今でも覚えています。

チラと垣間見たシートの中の男たちの光景も鮮烈でした。

初めて見る赤っ面の酔っ払い。ポマードとタバコと酒臭さの混じった大人の匂い。へ~、酒ってガラスのコップで飲むんだ。あ、唐辛子の缶が置いてある。なんであんな旨いものにわざわざ辛い粉をかけて食べるのだろう、と子供心に思いました。

しかし今となっては、そのすべてが理解できます。謎がいつの間にか謎ではなくなっていました。でも焼き鳥と銭湯は、私の中では永遠にワンセットなのです。

焼き鳥はタレに限る(塩じゃ食えない)!
そして唐辛子をかけてかぶりつくこと(串から外しちゃいけない)!

・・・ということで、焼き鳥の思い出でした。

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