最近読んだ本_2010/05

ずいぶん更新の間が空きました。仕事の関係で6、7、8月、ひょっとしたら9、10月もこんな調子かもしれません。

朝晩の日比谷線で、糸の目をして文庫本を読むシミが多くて顎鬚の勤め人を見かけたら、そっとしておいて下さい。読書の邪魔をされて荒れても知りませんよ(笑)。

浅田次郎選「人恋しい雨の夜に(切ない小説アンソロジー)」★★☆☆☆
 浅田次郎が選んだ平家物語から現代までの、自作を含む短編集。井上ひさし「あくる朝の蝉」は泣ける。
 珠玉の10編に心洗われた・・・、と書きたいところだが、古典は読み切るのがやっとだった無学な自分が切ない。
高野和明「13階段」★★★★★
 冤罪の死刑囚を救うための調査を引き受けた刑務官南郷と前科を背負った青年三上。粘り強い踏査の末に二人がたどり着いた驚愕の真実とは。
 人が人を裁くことの難しさと矛盾。死刑制度の裏側で苦悩する執行する側の人間。重たいテーマを扱いながらも、ミステリーとして巧妙に敷かれた伏線、息をつかせない展開に最後まで一気に読んでしまった。
 この作品には失礼な表現になるかもしれないが、面白いものは面白いと言わせていただく。
横山秀夫「出口のない海」★★★☆☆
 戦争に引き裂かれた愛、潰えた野球への夢が人間魚雷「回天」を軸に語られる。標的発見と同時に狭い連結部からもぐり込む窓のない回天の操縦席。母艦から切り離された後は、敵艦の船底めがけて暗い海中を進むのみ。そこに出口はない。戦時下の狂気は、若者の明日を奪い、人間の暗黒面に火をつける。
西加奈子「さくら」★★★★★
 不思議な小説である。家族の中で一番平凡な次男が、ただひたすら自分と家族のことを平易な言葉で語り綴る。
 寡黙で優しい父、力強くてぶれない母、いつだってヒーローの兄、エキセントリックだけど美しい妹、そしてその他若干の人たち。
 タイトルにも因む雑種犬サクラが通奏低音とすれば、全体に貫かれるのは「愛」。人は生まれ、成長し変化しいつの間にか大人になり、そして必ず辛い目に遇う。幸せな日々はいつまでも続かない。
 話の結末は限りなく悲しく切ないけれど、同じくらい勇気づけられる物語。こんな小説に出会えるから乱読はやめられない。
松下麻理緒「誤算」★★★☆☆
 一代叩き上げで財を成した鬼沢老人の専属看護師奈緒が、親族間で繰り広げられる遺産相続の醜い争いに巻き込まれ、次第に平常心を失って行く・・・。
 登場人物のほとんどが、少しでも遺産を多く貰おうといろいろな策を弄し、身も蓋もないエピソードが繰り広げられる。
 誤解を恐れず言うなら、これは女性でなければ書けない類の話だろう。男性には、こんなに本音がビシバシ飛び交う小説は書けるはずがない。

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