前回、この書評シリーズをアップしたのが2013/09ですから、あっ、という間に2年経ってしまいました。
この空白は、在宅で父のケアをしていた期間と丁度重なるので、若干の感慨がない訳ではありませんが、それはさておき再開にあたっての抱負は・・・、全くありません。
同じことを続けられる幸運を少しだけ感じながら、同じような書評を続けていきたいと思います(とはいえ、たぶん不定期となるでしょう)。
- 有川浩「図書館戦争シリーズ」★★★★★
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メディア良化法の名の下に,公序良俗を乱す図書の検閲が行われる近未来の日本を舞台とするSFもの、・・・と勝手に解釈。
表現の自由を死守せんとする図書館とその防衛部隊(火器武装が許されている!)が、法の拘束を盾に本を狩ろうとする良化特務機関(こちら悪者)と緊迫した攻防戦を繰り広げる。とは言えサスペンス色は薄く、著者お得意のラブコメ要素が強いので、ストイックなSF者にはお薦めできない。嵌まれる人だけ嵌まってもらば、というスタンスではあるが、映画化もされているし侮ることなかれ。
私は、しっかりした背景(SF的には虚構世界の構築と換言可能)、人物造形の上手さ、深みのある感情表現及び適度のラブラブに嵌まって、シリーズ6冊を一気通読である(笑)。
なんと言っても「熱血バカ」笠原、「怒れるチビ」堂上を始めとする柴崎、小牧、手塚、玄田ほか特殊部隊の面々(柴崎は準隊員か)が個性豊かで魅力的。そして、関東基地司令で防衛隊の創設者である稲嶺が、ストーリー全体を引き締める。
しかし、何だかんだで皆が皆、誰かと目出度く(少しほろ苦く)カップルになっとるな。こりゃ立派なラブコメだ。【追記】
このシリーズ、2008年にSF界の権威である星雲賞を受賞していたことを最終巻の解説で知りました。面目ない。
- 有川浩「植物図鑑」★★★★★
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「俺を拾ってくれませんか、躾の出来た良い子です。」
ごく普通のOLさやかは、一人住まいの玄関先で行き倒れになっていたイツキを、成り行きで自室に同居させる。
身の回りの野草、雑草にめったやたらと詳しく、またそれらを日々、器用かつ美味に料ることで、さやかの食事ばかりか日常全体を根本から変えてしまうイツキ。互いの深い部分に踏み込めないまま、必然のように強く惹かれ合う二人だが、別れはいつもある日突然やってくる・・・身近にある草花から、こんな美味しそうな料理を次々と繰り出されたら、結末はハッピーエンド以外、あり得ないじゃないですか。
私的に一押しナウの著者は、その期待を決して裏切ることなく、巻末に添えられた小ネタ的なサイドストーリーで小説世界を更に広げ、読後にはホッとひとつ温かいため息をつかせてくれる。