最近読んだ本_2012/05

先月、中途で投げ出した2本は・・・、そのまま放っといてと。

奥田英朗「オリンピックの身代金(上)、(下)」★★★★★
 緊迫感あふれる松本清張ばりの社会派小説であり,作者のイメージがガラッと変わった。
 東京オリンピック開催当時の日本には,東京と地方のどうしようもない格差があった。秋田出身の東大生島崎国男は、実兄の死をきっかけに身体を張ってその格差を,地方の闇を,政府と全国民に知らしめようとする。一途な思いは世界が注目する開会式で炸裂するのか。警察の威信、戦後日本の復興はどうなる。
 秋空に描かれた飛行機雲の五輪マークをリアルタイムで見た世代としては,当時の時代描写にまずグッときた。敗戦後初の一大行事に対する日本国民の思いともたらされたインパクトが克明に描かれ,改めて「東京オリンピック」というイベントのすごさを知らされる。
 惜しむらくは美青年島崎のその後に触れない終局だけですな。読んで良かった。お勧めの1冊です。
山本幸久「渋谷に里帰り」★★★☆☆
 あっさりとしたお仕事系青春小説。
 国立大卒だけどボーっとした食品会社の営業職峰崎は,子供の頃の思い出がつまった渋谷地区の仕事を厳しい先輩から引継ぎながら一人前に成長して行く。
 こういう軽くユーモアを含んでそれでいてきれいな文章には,身の程知らずながら憧れちゃいますね。面白く読めました。直木賞候補という評価がうなずけます。
北森鴻「桜宵」★★★★☆
北森鴻「蛍坂」★★★★☆
 三軒茶屋の奥深くにひっそりと佇むビアバー「香菜里屋」。マスター工藤が供する酒肴と日常に潜む謎へのヒントに惹かれて集まってくる人々は、工藤の洞察に驚嘆し、ときに困惑しながら料理とビールに酔いを深めて行く。
 シリーズ2作目と3作目。さて次は最終作。マスター工藤と香菜里屋の謎が明らかにされるらしい。楽しみ。

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