今日は、「BONDIC®」についてです。
液状のプラスチックをLEDライトで硬化させる接着剤で、一般用のものはホームセンターや東急ハンズ、Amazonで手に入ります。
今回、知人に勧められてBONDIC®を初めて手に取り、ギター演奏で傷んだ爪の補修と補強に試してみたらとても使い勝手が良いので、思わずガッツポーズが出ました。
その一方、薔薇に棘ありではありませんが、「硬化時の発熱」という思わぬ伏兵が潜んでいたので、本稿ではそのあたりを含めて語ってみます。
まず、BONDIC®に関して、主にギタリストに向けた筆者なりの注意喚起から。
筆者は、実際にBONDIC®を右手爪の補修に使って、すでに何度か発熱を経験しています。
発熱は大概「アチチ!」程度だし、感じたときにはピークを過ぎている瞬間的なものですから、今のところ爪の変質や火傷のようなダメージはありません。
・・・とは言え、当然ながら熱の感じ方や耐性には個人差があります。
万が一爪や皮膚にダメージが残るようなことがあっては元も子もありませんので、あえて冒頭で注意喚起する次第です。
BONDIC®自体はアメリカの製品のようで、日本では (株)Spirit of Wonder が販売しています。
上に「情報が充分ではない」と書いたのは、同社サイトの中で発熱に言及しているのがFAQ(よくある質問)の一項目のみだったからです。
Q:紫外線を当てたとき、化学的にはBondic®液にどんなことが起こっているのでしょうか。
A:Bondic®は液体分子または液状の「プリプラスチック」で、紫外線を当てると結合し、皆さんが日常よく目にする硬いプラスチックになります。
分子は互いに引き合っていますが、液状のため分離しています。そこへ紫外線が当たると液体が分解され、分子は本来の特性にしたがって整列します。つまり、プラスチックになるわけです。
通常、この反応は熱や射出成型で起こりますが、それを光で行っています。分子が整列する動きでBondic®内に一瞬熱が発生します。多めに塗布した場合、蒸気や煙が見えることがありますが、それらは発生した熱で蒸発したものです。
上記FAQで発熱があることを明言してはいるものの、あまり目立つ書き方ではないし、また、スターターキットなどの購入者が手にする取扱説明書は、発熱について触れていません。
◆取扱説明書
http://bondic-japan.com/wp/wp-content/uploads/pdf/BONDIC_manual.pdf
また、製造者側(?)から安全性データ(MSDS)も公表されていますが、残念ながら英語版しかないので内容は未確認です。
https://notaglue.com/pages/material-safety-data-sheet
https://drive.google.com/file/d/1jAXSsTIHnoxkQiAx5oCVSj8ZYIW9cEVi/view
上記のようにあまりにも情報が少なかったので、物性データの有無を含めて (株)Spirit of Wonder に問い合わせたところ、翌日には丁寧な回答が返ってきました。
予想どおり一番の主旨は、「皮膚や爪への使用はお控えください」とのことで、理由ほかが以下のように説明されていました(要旨を抜粋し意訳)。
2.はやや意味が取りにくいですが、こちらの意図を汲み取って好意的に回答してくださり、疑問だったことは概ね分かりました。
要するにBONDIC®は、そもそも人体への使用は想定外のようです。
当然といえば当然ですがね…………
最近は、歯の治療に光硬化樹脂が使われていたり、一般工作用のものがホームセンターやamazonで入手できるなど、世の中を広く丹念に探せば筆者の目的に合ったもの、つまりBONDIC®を上回る使い勝手、物性、C/Pで、なおかつ発熱の少ないもの又は皆無のものに出会えるのかもしれません。
そのあたりはこれからの課題にしておきます。
さて順番が前後しますが、筆者とBONDIC®の関わりについてです。
筆者は、趣味でクラシックギターを弾いています。
ギターは、ナイロン弦、スチール弦を問わず指で弦を弾くと爪には相当な負担がかかり、時には爪の先端部に割れや削れが生じることがあります。
ギターを一生懸命に弾く人は、プロ、アマにかかわらず爪のメンテナンスや強化策に、日々涙ぐましい努力と工夫に明け暮れている、と言っても過言ではありません(汗)。
そんな中で、筆者の場合は現在、Dr.Nail DEEP SERUM(浸透補修液)
それぞれの使用目的や使い方は省略しますが、この3点の合わせ技で爪をメンテナンスし、そこそこ安定した音質と弾き易さを維持していまして、コンサート前などクリティカルな時期には、爪を如何に良い状態に保つかで日々戦々恐々とするわけです。
ちょうど今がそこなんですがね(大汗)。
そんな中で4点目として加わろうとしているBONDIC®。
ギター仲間に「アレ、いいらしいですよ」と聞き、(ひょっとして決定版?)と期待しながら試しにスターターキットを買ってみた…………
……そんな経緯です。
自裁に使用して感じたメリット、デメリットを挙げてみます(あくまで個人の感想)。
音色を損ねることがないのは、ギター弾きにとっては非常に大きなメリットです。
瞬間接着剤のようにカチャカチャ音は出ないし、紙やすりで磨くとツルツルになるので、爪単体と同じような綺麗な音が出せるのは魅力です。
また、LEDライトを当てない限り硬化しないのも大きなメリットです。
塗る範囲、厚さ、形を余裕をもって調整できるので、筆者のような凝り性が凝りたいだけ凝れる……これは大きいです(笑)。
ただし、自然光でも硬化するようなので、屋外や強い光の元での使用には注意が必要かもしれません。
デメリットは、発熱と水に弱い点ですね。
例えば、昨日塗ったものが今日、水仕事をしたら剥がれてきた、風呂に入ったら取れてしまった、ということもあります。
(ちなみに、こちらのBONDICサイト(米国版?)のFAQには、「液が硬化したあとは耐水性あり」と書かれてはいますが)
これは、BONDIC®が接着剤より充てん剤に近いものであることと、爪との熱膨張率の違いが関係していると自分なりに解釈しました。
また、爪は水分でも膨張・収縮しますから、その影響で剥がれ易くなるのかもしれません。
どちらにしても、接着面と液体プラスチックを強固に一体化させることがポイントなので、販売社が推奨する「接着面の油分を除去」「接着面を紙やすりなどで荒らす」などのテクニックが、耐久性を延ばすには有効でしょう。
以上のように、販売社は「皮膚や爪への使用は自己責任で」と言っているものの、ギタリスト目線での使い勝手の良さから第4の道具としてBONDIC®は諦めきれません。
そこで、自分なりの対策を考えてみました。
硬化する際の発熱は、前述のように体感としては瞬間的なものです。
あくまで販売社のFAQ情報と使用した経験からの推測ですが、熱の発生時間は0.5秒以下、温度は60~90℃程度ではないかでしょうか。
「アチチ!」となってフーフーしたときには、すでに終わっている感じです。
爪という場所だけに、気持ちの良いものではありませんがね。
液体プラスチック自体は、LEDライトを当てて発熱した時点ですでに硬化していると思われるので、手の爪であれば、近くに冷水を用意、あるいは蛇口のそばでスタンバって、熱さを感じたらすぐに水で冷やすというのは有効策だと思います。
……とそんなことを考えましたが、いずれにしても安全性の保証はありません。
もし試されるなら何かあってもワンちゃん猫ちゃんのように舐めて治す覚悟で使いましょう。
オホン、冗談です。
光で固まる物質(光硬化物質というらしい)や接着剤を一般人が入手して使える時代。素晴らしいと思います。
今回、BONDIC®を入手し、光を当てるとほぼ瞬間的に固まって強度が出る接着剤を目の当たりにして(こんなものが今の世の中にはあるのか!)と驚きました。
そして、たとえそれが発熱という副反応を伴っていても、爪を大事にするギタリストにとって福音になる可能性を秘めていることが分かったのは大きな収穫でした。
ということで、もし筆者のような使い方をお考えなら、あくまで自己責任の範囲で、身体以外でテストするなどして事前に確認することをお勧めします。
幸せなギターライフを!