10月は意外に余裕がなくて、2冊に留まりました。
読書的には絶好調だった先月と何が違うのか?
率直に言えば気分ですかね。またはノリ?
我ながら身もふたもないですな。
ま、そんな感じで10月が終わります。
いわゆる推理小説の法廷ものである。
検事を辞めて弁護士になった佐方貞人は、元県の公安委員長で殺人容疑で起訴された島津を弁護するに当たり、彼の背景を調べ始める。
すると島津にホテルの一室で殺された高瀬美津子の長男卓が、雨の日に自転車で走行中、車にひき逃げされ死亡していたことが判明。車を運転していたのは島津で、証拠不十分で不起訴となっていた。
島津が必死に守ろうとする闇。
ひき逃げを犯しながらなぜ起訴されなかったのか。なぜ高瀬美津子の殺人容疑で起訴されることとなったのか。
弁護士佐方は、2つの事件の鍵を握る証人を見つけ出し、法廷での証言を迫るが…
この手の小説はあまり読まないのだが、以前読んだ「孤狼の血」が抜群に面白かったので手に取った。
読了して、よくできた小説だと思ったし、13万部以上売れるほどのベストセラーは、やはりそれなりに迫ってくるものはあると思った。
ただし、それ以上の感慨はなかった。おそらく記憶にも残らないだろう。
詰まるところ、残念ながら好みではないジャンルの小説だった。
本書の下地となっているキーワードだ。これだけでワクワクしませんか?
元宅配ドライバーの青柳雅春は、時の首相を暗殺した容疑で警察に徹底的にマークされる。
事件の背景にある政治的な陰謀の単なる先鋒である警察は、なりふり構わぬ強引な捜査手法で青柳雅春を追いかける。
逃避行の道々で出会う人々に、時には助けられ、時には裏切られながら、果たして青柳正晴は逃げ切れるのか。
こんな緊迫感あふれる逃亡劇、追跡劇は読んだことがない。ページを捲る手が止まらなかった。
しかしそこは伊坂幸太郎さんだ。単なる手に汗握るだけのサスペンスには留まらない。
彼が本書で訴えたかったのは、人の絆と信頼だと思った。
学生時代の仲間、宅配の仕事の上司、偶然知り合った花火屋の社長ほか、青柳正晴が逃亡の過程ですれ違う素敵なキャラクターたち。
彼を信頼し信頼され、理不尽な何かを感じそして憤慨し、必死の逃亡をほんの少しのユーモアとウィットを交えながら援護する。
「小説」には、もっと言うと「文章」には、書き手の人柄が現れると私は思う。
犯罪や暴力が絡んだ作品の多い幸太郎さんだが、2000年の文壇デビューから7年目に発表した本作には、彼の本質が強く現れていると思った。
逃亡の果のラストには、本当にジーンと来た。
どういうラストか書きたいが、当然書いてはいけないし、心の中に仕舞っておきたい気持ちが勝った。
最後は人の絆…、とだけ書いておく。