この冬は記録的な暖冬とかで、この2月は東京も雨の日が多く、この時期らしい寒さの日はほとんどありませんでした。
気候変動と温暖化との関連には諸説あるようだし、一介の市民に本当のところは分かるはずもありません。
それは別にして、CO2排出抑制の意識は、現代文明の恩恵を享受する限り地球上の誰であっても継続して高めていかねばならないでしょう。
Think Globally, Act Locally.
筆者の好きな言葉の一つです(逆も成立する味わい深さ…)。
広くは、環境問題を語るときに使われたりしますが、昨今世界中を脅かしている新型コロナウイルス関連の報道や世の中の動きを見ていて、その言葉が思い浮かびました。
今は、まさにそんな意識が必要ではないかなーと。
自分のことだけ考えてちゃダメよ…、という意味で。
…ということで、2月は外出や飲み会が少なかったせいか、マスクで眼鏡が曇るにもかかわらず6冊読めました(笑)。
最近は、本選びの参考にAmazonのカスタマーレビューをよく見る。
そこで高評価の「犯罪者」がたまたま目にとまり、手にとって読み進めるうちにこんなすごい小説を書く作家がいたのかと目を見張った。そして三作5冊を立て続けに読んだ。
著者は元々脚本家で、「ウルトラシリーズ」や「相棒」などを手がけたのち、2012年に「犯罪者」で小説デビューしている。
三作とも、テレビマン崩れの鑓水(後に探偵業らしきことを始める)、現役刑事の相馬(ストイック過ぎて踏み絵が踏めず署内では冷や飯食い)、二人に命を救われた修司(元悪ガキだが鑓水の元でいい仕事をするようになる)の3人を軸とするクライムサスペンス。
「犯罪者」は企業の社会的犯罪、「幻夏」はズバリ冤罪、そして「天上の葦」は国家権力による報道、言論の弾圧をテーマとする各々独立した長編だが、上梓順に読めば3人の背景や登場人物の相関を徐々に知る楽しみが加わり、著者の世界観をより深く味わうことができるので強くお勧めしたい。
今回はこの三作、厚さ2cmほどの文庫本5冊を約3週間で読了した。私にしては驚異的な速さだ。理由を挙げればきりがない。
第一作の「犯罪者」では、18歳の設定で登場する修司の驚異的な洞察力と狡猾さに違和感があったが、それも束の間だった。三作を通して欠点の少ない見事な連作小説と言えよう。
著者がこれから先も小説を書くのかは分からないが、期待を膨らませつつ待つのも本読みの楽しみの一つだ。きっとこの三作にも増して凄みのある作品が飛び出してくることだろう。
著者はイギリス南西部のサマセット出身。
1964年に来日し、フィナンシャル・タイムズ、タイムズ、ニューヨーク・タイムズの東京支局長を勤めた生粋のジャーナリストだ。
本書は、日本を愛してやまない著者から日本人に向けた強烈なエールになっている。要約すると「自分の国の歴史や文化を大切にしなさい。そしてもっと自分の国を愛しなさい」との趣旨で首尾一貫している。
あまりにも日本を礼賛するので、(そんなに褒められると却ってこそばゆい)とか、(どこかで落とされやしないか)などと思うくらいだ。
特に著者が力説するのは、「大東亜戦争は、日本が始めた侵略戦争なんかではない」という点だ。
ヨーロッパの白人に植民地化され搾取され続けてきたアジアの解放が目論みの一つだった、日本人がヨーロッパの列強を蹴散らし、インフラ整備や教育普及を進めたお陰でインドネシアを始めとする東南アジアの各国は独立に進むことができた…、との立場に立っている。
敢えて言えば、いわゆる右寄りの考え方だろう。
このあたりは、本当にいろいろな見方や考え方、立場で諸説が分かれるので、浅学菲才で歴史音痴の私は、(そういう側面もあったのか)という程度に受け取らざるを得ない。
しかしながら、日本人は戦後にGHQが実施したといわれるWGIP(日本人の心に贖罪意識を植え付けるための占領施策)による「洗脳」から解放されるべき、としている点には大いに共感する。
なぜなら、個人的に昔から感じている(我々の頭に刷り込まれた明治維新以降の日本近代史は何かがおかしい、何かが足りない)という疑念をものの見事にクリアにしてくれるからだ。
そのほか、先にも述べた「自国を愛せよ云々」との主張は至極もっともで、本来は他国から言われるべきことではないことを言われてしまうほど、現代の日本人はある面で病んでいると言えよう。
本書は、日本礼讃という意味で読んで気持ち良くさせてくれる一方、独自の優れた資質や文化を持つ日本人は、時間は掛かっても本来あるべき姿を取り戻さねばならないと改めて気付かせてくれる。
賛否はあって当然だが、一度は読むに値すると感じた。