寒かった冬もいよいよエンディング。アンコールは無粋につきご遠慮申し上げます。
・・・ってわけで、今日は高知で桜が開花したというニュースが入ってきました。
筆者が所属するギタークラブでは、花見の日程を初期設定の3/17では早過ぎるということでわざわざ3/24に繰り下げましたが、その後東京の開花予想は3/19に修正されたので、こうなってくると逆に(遅すぎやしないか・・・)と気を揉む方が出て来るかもしれません。
速いの遅いのとの喧しさは、桜以外にもいろいろ変化の多いこの時期定番の暗騒音と言えるもではないでしょうか。
さて、2月は3冊(正確には2.5冊)。
寒さで読書もペースダウンしていましたので、気温の上昇とともに徐々に加速するでしょう、・・・なんちゃって。
仏教の教義における「空」と「色」の概念は、とてもむずかしい。般若心経では、「ギャーテーギャーテー・・・」に次いで有名なフレーズ「色不異空 空不異色」、「色即是空 空即是色」で「空」と「色」の関係性を説明しているが、凡人には到底理解できるものではない。
四国巡礼を継続中の不肖私メは、殊勝にも仏教関係の書籍数冊から少しでも理解を深めようと試みたが当然ながら遠く及ばず、おぼろげなイメージは浮かぶものの何となくもやもやしたものを抱えたままちょうど半分の四十四番まで進んでいた。
本書で著者は、「空」を○○○○○、「色」を○○○○と誰にでも分かる言葉で大胆かつ明確に定義し、仏教的な解釈ばかりか故人の言葉、輪廻転生、相対論、果てはビッグバンまで取り込んで(多少強引に)説明する。
な~るほど!それなら空と色の相互関係もきわめて自然にイメージできるし、相対論のE=mc2とも整合するじゃん、スゲ~・・・、と思ってしまうほど自称理系脳の私メにはすんなり受け入れることができた。
いや、むしろ腑に落ち過ぎて怖いくらいだ。
でも、一般にはあまり聞いたことのない定義と説明なだけに、限りなく核心に近い解釈だがどこか少しズレたところがあるのかな~、と考えて頭と心のバランスを取ることにした。
1、2、3ときて0に戻るとくれば当然前日譚でしょ〜、というわけで主人公の内科医 栗原一止の学生時代、研修医時代と、1以降に登場する仲間たち、先輩たちとの交流が4本の短編で描かれる。
とりわけ後に一止の妻となる山岳写真家 榛名の出自と小柄な身体に秘めた力強さには胸を打たれた。幼い頃に両親を亡くした榛名は、家庭不和から捨鉢になり生きることを諦めかけた遭難者に「帰る場所なんて、自分でつくるものですよ」と諭す。・・・そ、そのとおりだな。
本書では、シリーズタイトルの意味も初めて明かされる。
「人はみな神様が書いたカルテを持っているのであり、何人もそのカルテに抗うことはできない。医師とは、そのカルテに沿った人の生き方に寄り添うことができる唯一の存在なのだ(意訳!)」、と指導医の板垣(大狸先生)は、居酒屋で一止に語る。
ああ、神は我のためにどんなカルテを書き、そしてどんな結末の舞台からいつ降りるのだろう。まさにそんなことを考えさせてくれるシリーズ、そして本書である。