独自の視点でYouTubeのギター映像を紹介する本シリーズ。
今回は、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲したボサノバの名曲”A Felicidade”の特集です(ブラジルものが続きますが…)。
”Felicidade”とは、英語で”happiness”、日本語では「幸せ」と訳されるポルトガル語。頭の”A”は、調べてみると英語の”The”に相当する女性形単数を表す定冠詞なので、ジョビンは女性が歌うことをイメージしてこの曲を創ったようです(ホンマかいな)。
この曲ほかボサノバの数々が劇中歌として使われた映画「黒いオルフェ」は、1959年に公開されアカデミー賞ほか国際的な賞を受賞しました。
評論などを読む限り、映画そのものの出来は「???」のようですから、ジョビンが担当したサウンドトラックとちょうどその頃が黎明期だったボサノバが、この映画の評価を著しく押し上げたと言っても過言ではないでしょう。
それにしても”A Felicidade”は、それは物憂げな曲調で歌詞も「悲しみには終わりがなく、幸せには終わりがある」と限りなく切なく厭世的、と言うか哲学的ですらあります。
さすが陽気なカリオカの国ブラジルでは、陽光も濃ければ陰の濃さとて半端ない・・・、そう解釈しておきましょうか。
前口上はさて置き、硬軟織り交ぜて5本をアップしました。(同じ曲かよ)と諦めることなく、ぜひ最後まで付いてきてくださいね(笑)。
まず1本目。
作曲者のジョビンと共にボサノバを創成したとされるジョアン・ジルベルトのライブ。決して上手い歌い手とは思わないし筆者の好みとも違いますが、彼の軽快なギターと飾り気のない歌声には熱烈なファンがいますね。
A Felicidade by Joâo Gilberto(Live in Montreaux, 1985)
続いて、Bonner Jazz Duo(V.Vashchenko&E.Zhidkov-Schulz)の演奏。何と言っても右側のシュルツじーさん(失礼)がファンキーでカッコイイです。
そして内緒の話、中間部はなんと後半3本への前振りとなっているではないですか!
”Felicidade”- A.C. Jobim; played by Bonner Jazz Duo
デュオをもう一本。(たぶん)ドイツ人デュオのdie_Snobsは、ギター+カホンで聴かせてくれます。しかしこの二人、ギターの彼は目が泳ぎまくりだし、カホンの彼の口元は虫歯でもあるのか固く結ばれ、なんとなくコミカルに見えてしまいますが、演奏は多少のアレンジはあってもいたってシリアスです。
ちなみに、ここから先は筆者の敬愛するRoland Dyensのアレンジ版が続きます。
A Felicidade – Jobim (arr. Roland Dyens) by die_Snobs
続いて、ロックかパンクと見紛うルックスでDyens版をストイックに弾くのは、Stephanie Jones。小さな手にもかかわらずすごくきっちり弾いているし、硬軟強弱の付け方やビブラートからは、そこはかとなく女性らしさが感じられ筆者的にはかなり好きな演奏です。
Felicidade by Jobim, arr. Dyens, performed by Stephanie Jones
最後は、編曲者本人の演奏で締めてもらいましょう。
どこぞのレストランで興に乗ったディアンスおじさん。「ちょっと一曲」とばかりに得意な曲を弾き始める…、気の置けない仲間たちはギターに合わせて一緒に口ずさんだりテーブルの上の食器で適当な合いの手を入れ…、なんて楽しそうなんでしょう。
・・・これぞまさしく音楽! 幸せなひと時ですね!!
Roland Dyens “A Felicidade” de Antonio Carlos Jobim.
【まとめ】
ブラジルのジョビンは、”A Felicidade”で「悲しみには終わりがなく、幸せは束の間・・・」と詩に書きました。
一方、イギリスにはこんなことわざが伝わっているそうです。
一日だけ幸せでいたいなら、床屋に行け
一週間だけ幸せでいたいなら、車を買え
一か月だけ幸せでいたいなら、結婚しろ
一年だけ幸せでいたいなら、家を買え
一生幸せでいたいなら、正直でいることだ
実は、東洋においても中国に同じようなことわざがあって、最後の一行は「釣りを覚えよ」となるそうです。きっと彼らは食べることまで考えているのだろうな〜(笑)。
”A Felicidade”、幸せになりそれを持続させる方法は、国によってもいろいろだし一人ひとりみな違ってよいのです♪