Categories: 雑記音楽

SAUDADE(サウダージ)が分かったような気がする / Incompatibilidade de Gênios

今日は、不思議な言葉「SAUDADE(サウダージ)」について

 

「サウダージ」は、どちらかと言えば音楽やファッションのようなイメージ先行の分野で耳にする機会が多い単語だとは思いますが、その具体的な意味となるとエ〜とかアレッとなる方がほとんどではないでしょうか。

 

ちなみにGoogleで引いてみると、J-POPの楽曲、新宿のスペイン料理店、2011年上映の邦画などが上位に出てきます。

筆者が思い浮かべるとすれば、ベタに「南米」。

シーンとしては、人影のまばらなビーチ。ギラギラした昼間ではなく、憂いや淋しさの漂う黄昏どき。

 

砂浜に寄せては返す波の音、空は黄から白、白から薄青、青、藍、紫のグラデーション。水平線には焼きが入るように太陽が沈みかけ………………そんなイメージ。

ちなみに語彙の貧困という概念は、本稿を読み終えてから思い出していただきたい、オホン。

 

サウダージ(ポルトガル語: saudade, サウダーデとも)とは、郷愁、憧憬、思慕、切なさ、などの意味合いを持つ、ポルトガル語 , ガリシア語の単語。
ポルトガル語、およびそれと極めて近い関係にあるガリシア語に独特の単語とされ、他の言語では一つの単語で言い表しづらい複雑なニュアンスを持つ。

Wikipediaから引用

 

Wikiには、ほかにも、

  • 単なる郷愁、ノスタルジーでない
  • 温かい家庭や両親に守られ、無邪気に楽しい日々を過ごせた過去の自分への郷愁
  • 大人に成長した事でもう得られない懐かしい感情
  • 追い求めても叶わぬもの

そんな感傷的な意味合いを持つと書かれていました。

 

とにかく一言で説明できない重層的で複雑な意味や感情が込められた単語だけど、それは決してネガティブ一辺倒ではなく、希望や喜びのようなポジティブな感情も控えめに込められている…………そんなふうに筆者は感じます。

でも、それらが何から、どこから来るものなのか、そしてその単語を生み出し大事にしてきた人たちが心の内に秘めたもの、描いているものは何なのか、それが今まで分からずにいました。

 

 

……で、本稿の趣旨は「この曲でサウダージが分かったぜ、イェイ!」です。

Joao Bosco & Gonzalo Rubalcaba / Incompatibilidade de Gênios

(日本語のタイトルは「性格の不一致」又は「天才たちの不調和」らしい)

 

この曲から真っ先に浮かんだのが望郷の念、懐かしい故郷によせる思い、そんなイメージでした。

それだけでは分かりにくいと思うので、以下説明です。

 

 

そもそも南北アメリカ大陸には、ヨーロッパ諸国によって植民地化されてきた歴史があります。その中でも南米大陸東側のブラジルにはポルトガル人が入植し、15世紀末から19世紀初めまでその植民地支配が続きました。

ポルトガル人は、まず先住民の人々を奴隷化して砂糖の生産を始め、人手が足らなくなると今度はアフリカ大陸の人たちを連れてきて使役し、ブラジルは世界最大の砂糖生産地になります。

世界史の窓:ブラジル

 

その後、産業の主役は、金、ダイヤモンド、コーヒーへと移りますが、植民地時代から現代へと続く歴史の中でブラジルの主要な労働力となったのは、アフリカから連れて来られた人たち、ポルトガルからの植民、そして日本ほかアジア、ヨーロッパ諸国からの移民でした。

 

 

結果として、国の外から入って来た人たちとその混血の人たちが、ブラジルの人口の大半を占めることになります。

Wikiによると2010年の統計では、先住民は驚いたことに人口全体の僅か0.4%とのこと。

この南米の大国が、海山を超え遠方から入ってきた人たちで成り立つ「移民の国」であることがよく分かります。

Wikipedia / ブラジル

 

 

さて、ここまで書けば筆者の言いたいことが、なんとなくお分かりいただけるでしょう。

 

「サウダージ」とは、遠方や他所から来て苦難の歴史をたどってきた人たちが、自らの出自、生まれ育った故郷、そこにいる家族や縁者、祖先、大切な人々、もう会えないかもしれない人たちに寄せる思いや祈り、深い望郷の念が込められた言葉、概念に違いありません。

夕暮れの海岸、没みゆく太陽、遠い遠い空の向こう、サウダージ…………

 

あくまで浅学非才な筆者がひねり出した結論なので、なんの信憑性もありません。

 

 

それにしても、サビはなくAメロBメロを延々繰り返して盛り上がり、最後はパタッとあっさり終わってしまう「Incompatibilidade de Gênios」は、東洋の島国に住むブラジルとは縁もゆかりもない一個人にそんなことを考えさせる不思議な曲、理解を外れた曲、言うなればサウダージそのものなのかもしれません。

やはりミソはコード進行ですかね。テンションコードが気持ちいいです!

 

 

今度はギター2本で。

 

 

この曲を作ったJoao Bosco(右側の人)というコンポーザー、パフォーマーも、きっと自分の出自や家族などいろいろなことに思いを馳せながら創作したのでしょう。

それは日本人が唱歌「ふるさと」に対して抱く感情に似ているかもしれないし、もっと広げれば人間に共通する某有名な絵画のタイトルにもなっているある思いにたどり着くような気がします。

 

それは……

D’où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ? / Eugène Henri Paul Gauguin
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか/ポール・ゴーギャン

 

広げすぎて収集がつかなくなりそうなので、ここらで「性格の不一致」のようにあっさり、パタッと終わることにします。

おしまい

 

 

 

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