年が明けたと思ったら早くも月末。
オミクロン株の蔓延はとどまることを知らず、感染者数が過去最高を更新し続ける中で書いています。
そういえば、次回書評をアップする頃には一歳年をとっているのですよ。
6回目のゾロ目の一年は変化が大きいと予想しているので、せめて疫病のような外乱は勘弁願いたい。
まあ、思いどおりにならないのが人生なんですがね。
1月は2冊でした。
本当はもう一冊読みましたが、上下2冊の上巻なので来月に回します。
「百舌シリーズ」の3作目。
前作の書評に書いたように知人の勧めで2作目から読み始めた。
ストイックな警察もので、背景に百舌(当然ながら真の主役)を置き、倉木、明星、大杉、津城ら4人の刑事が軸となって政界も絡んだ濃厚なストーリーが展開される。
かつて能登の断崖に消えた“百舌”が工作員として再び日本に潜入した――。病院で起きた大量殺人と突然の捜査打ち切りに政治的陰謀を感じた公安の倉木は、独自の捜査を始める。
− 集英社のシリーズサイトより引用 −
本作は前作と同じ限りなく怪しい病院が舞台となり、前作以上にハラハラドキドキした。
冷静に読むと、そんな適当な医者と粗暴この上ない看護師しかいない病院があるかい! 経営が成り立たんやろ!! ご都合主義!!!……となったりするので、エンタテイメントと割り切って楽しむのが吉だ。
当然作者も意図して書いている。
内容そのものとは別に、流れるようなストーリー展開や随所に仕込まれたあっと驚く場面転換に、さすがプロの仕事と思わされた。
本作では、4人の刑事はそれぞれ大変な目に会った後、次作では次のパラダイムに入る。ハチャメチャな病院編はここまでらしい。
なのでいったん本シリーズから離れることにする。そしていつかは、このシリーズに百舌のように戻ってくるだろうwww
僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い
双子の兄弟が織りなす、「闘いと再生」の物語常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語り出す。
双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの、誕生日だけ起きる不思議な現象、「アレ」のこと――。
ふたりは大切な人々と出会い、特別な能力を武器に、邪悪な存在に立ち向かおうとするが……。
紛うことなき伊坂さんの作品だ。
登場人物は比較的少なくて読みやすい。散りばめられた伏線にも気付けるようになった。
時々ニヤッとしたり途中何度か眼を赤くしながら、終盤で次第に明かされる真実にほろ苦さを感じつつ、最後で少しだけホッとして読了した。
本作には、絶対的な悪意に蹂躙、翻弄される子供や若者が複数登場する。双子の優我と風我も父親からの酷い虐待の中で育った。
あとがきには、「僕には、そういったこと(大変な家庭環境にある子供の事件)をテーマにして問題提起する力はないし、そもそも解決の方法も分からない(意訳)」とある。
現代エンターテイメント小説界の騎手と言われる伊坂さん。でもそれは舌足らずな称号と私は感じる。
ベースにあるのは、決して甘くはない世の中を生きる人々へのエールと、他人の辛い経験や憂いを分かろうとする優しさだ。それをエンターテイメントで包み、一見ドライなようで思いやりに満ちた小説に仕上げる筆力に惹かれるから手が伸びるのだ。