全国的にコロナ第4波がようやく収束したのも束の間、Tokyo2020開幕を目前にして今度は変異種による感染者の増加が懸念され始めています。
イツニナッタラオサマルノヤラ……
そんな中で筆者が言いたいのは、
延々続く自粛生活にただでさえモヤモヤが溜まっている中、間近に迫った晴れ舞台に向けて続々と決まる我らが代表選手に期待が膨らむ一方、散発的に入国し始めた海外選手団で感染者発生のニュースに慄いて、「どっちかといやー、やらない方がいいにはいいんだが……」と新たなモヤモヤが育ち始める予感に、「わりゃ~、はよ強いメッセージ出さんかい!」と国のリーダーたちにここ一番の檄を飛ばすかと思いきや、マスク越しにいつもと同じくモゴモゴとしか言えない筆者に賛同してくださる一般ピーポーの皆さん、ご機嫌いかがですか?
……そ、そんなところです。
今月は3冊。
読書的には、充実していました。
著者得意の連作短編集だ。
本作では、「日本人初のボクシングヘビー級チャンピオン」という夢のある、かつ愛すべきキャラクターを緩い軸として若い男女の恋愛模様が全6編に展開される。
著者の作品でプラス1星を付けるのは今回が×作目(数えなくちゃ)で、本作も率直に言って面白かったしワクワクドキドキしたので6星とした。
各編の登場人物には各々繋がりがあるのだが、時制がずれていたり、名前の省略や結婚前後で姓が変わっていたりするので、(この人は、あそこに出てきたあの人の奥さんだよな?)などとページを戻ること度々。
記憶力の限界で寸止めされながら既読の編を俯瞰することでさらに先への興味が深まる。
このあたり、計算済みの仕掛けと分かってはいても著者の作品ならではの醍醐味が味わえて嬉しい。
しかし本作のテーマと魅力は別のところにある。それは、簡単に言えば全編に共通する「人との出会い」だ。
出会いとは、出会うこと又は出会った相手もさることながら、それ以上に時間が経過して振り返って初めてその価値が分かるものだ……、と「まあな」が口癖の織田一真(チルドレンの陣内調査官似で荒っぽいが憎めない)に雑に語らせている。
分かったような分からないような理屈だが、本作を読了して余韻に浸っていると何となく(そうかもな~)と思えてくるから不思議だ。
それは著者の経験によるものだろうし、読み手にすれば教訓ぽいけど押しつけがましさのないところがまた「らしい」と思えるのだ。
ゴールデンスランバーと並んで記憶に残る6星だった。
一言で表せば、輪廻転生、生まれ変わりにまつわる人の業の物語。
直木賞受賞作だ。
濃厚な内容だし、賞取りだけあって文章もさすがだが、正直言って読むのにとても苦労した。
部分的に時系列が見えなかったり、一方通行なのかループなの分からなくなって迷う。また、読み進むにつれ関連人物の相関図が欲しくなるほど錯綜してくるので後半の読解は50%程度だろう。
我儘で恐縮だが、読解力と記憶力、それと根気の怪しい高齢者には厳しい小説だった。
児童養護施設七海学園とそこを家として日々生活する子供たちを巡る短編集。
新任保育士の北沢春菜が子供たちと交わる中で、学園に伝わる七不思議の裏に隠れた数々の謎を、心優しい児童福祉司海王さんの力を借りながら解き明かしていく。
いやはやなんとも、びっくりした。
各編ごとに一話完結で淡々と読了するかと思いきや、最終編の壮大な仕掛けに本当に驚いた。
伏線の回収が見事なだけでなく、児相や施設に縁のある子供達の厳し過ぎる現実とその背景、悲哀、そしていつか笑って暮らせる日が来るという希望と未来にかけて爽やかすぎる大団円にまとめている。
第四話の回文エピソードも実はこの小説の重要ポイントなのだが、途中まで扱いが中途半端と思っていた自分が恥ずかしい。
ミステリーとしてのテクニックは高レベルだし、またそれに偏りすぎることなく小説としての読み易さや情緒、エンタテイメント性を上手くバランスさせた見事な作品。
北沢春菜と友人の佳音ちゃん、二人のキャラクターも魅力的なのでぜひ再会したい。
文句なしの6星。続編が楽しみだ。