在宅勤務中は、意外に本が読めません。
じゃあ、いつどこで読むの?
いつはさて置き、どこは……
筆者の場合、一に電車の中、
二に千代田区丸の内の某所、
三四がなくて五は自宅のベランダ。
某所が気になる方は、一番下の追記へどうぞ (^^)
すべてに後ろ向きな大学生活をおくる筧井雅也のもとにある日、拘置所に収監中の死刑囚榛村大和から一通の手紙が届く。自分の犯した連続殺人のうち最後の1件だけは冤罪なので、それを証明してほしいという内容だった。
不審に思いながら彼と面会した雅也は、大和になぜか惹かれるものを感じ依頼を引き受けるが、調査を進めるうちに自分の内面、外面とも次第に変化していることに気づく。
常軌を逸した犯罪により死刑を待つ大和の真意は何なのか。吹っ切れたように調査に没入する雅也は、どんな真実を見ることになるのか。
小説だけなく現実に連続殺人や奇怪な事件があるからには、世の中にいわゆるシリアルキラーやサイコパスの素地を持つ人間が一定数いることは間違えない。
本書で描かれる榛村大和がそれらの異常者像を正確に表現しているなら、優しい仮面、抗いがたい魅力の裏に絶対悪を内包するその手の人間には、現世はもちろん、あの世でも出会いたくないと強く思った。
本書はサスペンスものに分類されると思うが、犯罪の惨たらしい描写があったり、雅也がどこまで行ってしまうのかハラハラさせられたり、怖さはラストまで半端ない。
しかし評価としては、一気に読ませるストーリー力、文章力はあるものの全般に暗く救いがないことが筆者の嗜好に合わず三ツ星とした。
小学校時代の同窓生加納灯里とのエピソードにもう少し膨らみがあれば、陰鬱な背景が和らいだかもしれない。
婚約を突然破棄され道端で泣いていた田中妙を自分の家に連れて帰り、ひととおり話を聞いたうえで「この店で働きなさい」と命ずるように言う北村菫。そこは、宝石箱のように小さな棺桶を売る店『ビオレタ』だった。
最初から最後までボワーンとした不思議な小説だ。
主人公の妙からして、そもそも掴みどころがない。他人からいつもジタバタしていると見られ、自分では揺るぎない人間になることを願っているが、なかなか叶わずほぼ最後までジタバタしている。
主要な登場人物はみな個性的な割に背景や内面はあっさりとしか描かれない。
捨てたいものを小さな棺桶に収めてビオレタの雑然とした庭に埋めるというエピソードも然り。目立った事件もない。ラストもまたあっさりだ。
でも、妙は変わる。個性的で優しい人達と出会いそして見守られ、人生を前向きに生きるために必要な何かを得て確実に変わる。
普通の人が普通の人たちと出会ってなんとなく成長して行く姿。著者はそんなものを、すなわち普通の人生を自分自身に照らして描きたかったのだと思う。
全体に漂うボワーンは、大きな山も谷もない普通の人生を大切に思う著者の暖かさだったといま気づいた。
◆ 丸善丸の内本店3F:明るく静かで人も少ない。窓外の景色がそりゃもう!