誰もが経験しているにもかかわらず,ある時期になると忘れてしまう青春期の不安と葛藤。大人にはこの気持ちは解らない,などと思いつつもその”大人”に一歩一歩近づいて行ってしまう焦り。
紀子が小学校から高校で過ごす永遠とも思えるような時間が各章ごとに鮮やかな断面に切り取られていきます。級友との誕生会,子供だけの遠出,非行と万引き,アルバイト,恋愛とデート,卒業と別れ・・・。読んでいてああ,こんなこと,あんなこともあったなと,懐かしくも自分の学生時代が思い起こされました。「時の雨」は何だか身につまされてホロっと来ましたし。
紀子の父親のようにどっしりと構えていたいと。別に浮気しているわけじゃありませんけど。 重たいミステリーやサスペンスに疲れたときに読むと心にしみる一冊。エピローグもしゃれています。元気をもらいました。