今月も2冊でした。
さて、巷では……
そんな昨今です。
1800年代後半のパリを生きたフィンセントとテオドロスのファン・ゴッホ兄弟。
新しい潮流である印象派のさらに先を走っていた二人の実像を、日本人の画商林忠正と助手の重吉の眼を通して描く著者ならではの作品。
兄フィンセントの描く炎のような絵画の数々はいつ世に認められるのか。
早くしないと彼は……
……早く早くと願いつつ、著者の折り目正しい文章もあって一気に読んだ。
全編を貫くのは悲しみだ。
自己を封印し家庭を守りながら情熱の赴くまま絵を描き続ける兄を献身的に支えるテオドロス。フィンセントの才能を時代が受け入れないことを見抜いていた忠正。そして内から湧き出てくるものを扱いきれずに苦悩するフィンセント。
欲を言えば忠正と重吉にいま一歩の深みがあればと思ったが、絵画界に造詣の深い著者でなくては書き得ない史実に基づいた物語に感動するとともに、当時の浮世絵の影響力を知ることができて勉強にもなった。
一言で言えばロボットもの、異星人もののSFと時代劇を合体させた小説だ。その時間軸の奥深さと内容の濃さから一大絵巻と言ってもいい。
200年にも亘る物語をあらすじにまとめるのは諦めた。
大昔に異星から来た金色様。
その名のとおり金色に輝き、ここぞという場面では驚異的な戦闘力を発揮するヒューマノイドだが、アシモフのロボット三原則がかなり正確に投影されていながら妙に人間臭いところがあってとても愛らしい。
主要な登場人物である嘘や殺意を見抜く心眼の持ち主熊吾郎や、触るだけで相手を葬る力を持つ娘・遥香のほうがよほど恐ろしいキャラクターに感じられる。
ホラー作家と謂われる所以か。
上手く言えないが全体のバランス的にやや弱さを感じてマイナス1星としたが、とにかく今までに読んだことのない類の、それも面白い方に振れた小説のなのは間違えない。
Wikiの「幻想的で精妙な作風」との著者評が本書のイメージそのものに思えた。