Categories: 本/書評

最近読んだ本_2020/09前半

昨日今日は、長袖でちょうど良いほど涼しくなりました。

いよいよ秋の始まりですね。台風が少ないといいな。

 

最近、書評が長くなりがちなので、9月は2回に分けます。

前半の2週間は3冊手に取り、2冊読了しました。

 

それでは、今の気持ちで一句読みます、ドドン。

  曼珠沙華 途中棄権も また読書

お粗末でした。

 

東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)」★★★★☆

当たりをつけた金持ちの家で盗みを働き、とある廃屋に逃げ込んだ3人のグレた少年。

通りに面したシャッターから突然投入されて来た悩み相談の手紙を読んでいたたまれなくなり、思いついた回答を書いて裏口の牛乳箱にいれる。

すると間髪置かず相談の続きが来た。

 

不審に思いながら何度かやり取りを繰り返えすうちに、自分たちがモスクワ五輪当時から届いた相談に、いつか聞いた覚えがあるナミヤ雑貨店から答えていることに気づいて愕然とする。

彼らはいったいどこの誰とやりとりしていたのか。そしてナミヤ雑貨店と店主の浪矢雄治にまつわる奇蹟、そこに関わる多くの人々の思いとはいったい・・・

 

全編にわたって張り巡らされた伏線は、話が進むにつれ見事に回収されてやがて一つに繋り、時間と世代を超えた心温まる物語が姿を現す。

SF的な背景もあったりして、私としては好きな部類の小説だった。

 

しかし、よくもこのような複雑に絡んだ物語を生み出し文章にまとめたものだと感心し、そして改めてすごい小説とすごい書き手だと思った。

 

その一方、時代を超えた人の繋がりの全体像を掴むことに気を取られたせいか、読後に残るものは意外に薄かった。

さらに言えば・・・、いや、そこまでは言わぬが華か〜、とすごく迷う・・・、メッチャ迷う・・・、でもやっぱり言っちゃう。

 

本書は、確かに評価の高い人気小説だが、多作の著者の(どうですすごいでしょう、こんな小説も書くんです)的な圧を感じてしまったのも正直なところだ。

例えて言うなら、カメラ目線というかドヤ顔というか・・・

 

アワワ、そんな生意気なこと言っちゃっていいのか?、大丈夫なのか?

 

・・・そうそう、そんなふうに迷ったり悩んだり後悔したときには、素直な気持ちを手紙に書いてナミヤ雑貨店のシャッターの郵便受けに投函すると良いといいらしい。

そして翌日には、お約束どおり裏の牛乳箱に的を射た返信が入っているといふ。

 

ほう、それはおもしろそうだ。やってみるか。

 

 

恩田陸「夜のピクニック(新潮文庫)」★★★★★

今回は青春小説だ。

柄にもなくちょっとときめいた(汗)。

 

(この先、ネタバレあります)

ある高校で年に一度行われる「歩行祭」。学校の全員が行程80kmを夜通し歩く伝統行事だ。

主人公のひとり、母子家庭で育った甲田貴子は、3年生で初めてクラスメイトになった西脇融(とおる)をある理由から意識していた。

それを知ってか知らずか、融も時おり意味ありげな鋭い視線を投げてよこし、二人の間には、互いに意識すれども会話せずの微妙な関係が成立する。

 

そんな折に行われる歩行祭に、貴子は自分でも勝敗の予想がつかない賭けをする。

(融に話しかける。そして返事してもらう!)これができるかできないか。

 

三年生にとっては、受験や進学へと気持ちを切り替える大きな節目となる最後の歩行祭。貴子と融、そしてクラスメイト達は、思春期の多感な想いとそれぞれの悩みを抱えながら遥か先のゴールを目指してひたすら歩き続ける。

そして、貴子の賭けの行方は如何に。

 

著者の作品は何冊か読んだが、青春ものは「六番目の小夜子」以来だ。ストーリーはすでに忘却の彼方だが、終盤の(ホラーっぽい?)盛り上がりに圧倒された覚えがある。

本作には、そういった大きな盛り上がりこそないが、全編を通して通奏低音のように描かれるコース沿いの情景描写が印象に残る。生徒たちが歩きながら目にする昼間のキラキラした海、青々とした山、夜の街のきらめき、木々のざわめき・・・・・・。

著者の筆の力だ。

 

一日に80km歩き通すことは苦行だが、青春期に男子校(正確には女子のいない学校)の経験しかない私は、17~18歳の男女混合でお互いの微妙な関係を意識しながら、将来の夢や悩みを語り合いながら夜通し歩くイベントと、それを含めた高校生活というものに一抹のうらやましさを感じた。

 

アァ〜、ワテがもし、そんな輝かしい正統派の青春期を過ごしていたなら、清く正しく楽しさ満載の男女交際を経験していたなら、その後のワテは全く違う人生を歩んでいたかもしれん。全然違う人格の男になっていたかもしれん。

 

・・・と、初老のおっさんはつかの間、年甲斐もなく胸をときめかせ、瞳に星を宿したのだった。

ウム、心ザワつく小説でございました。

 

 

森見登美彦「有頂天家族 (幻冬舎文庫)」星評価なし(途中棄権)

やっちまった。

いまだに7年前に読んだ「ペンギン・ハイウェイ」の余韻を背負っていることを思い知った。

 

前回は、魚を背負った乙女が出てくる作品で挫折した。今回は天狗と狸で、だ。

完璧なる森見ワールド。

そこを了見して通読した先には、感動と慟哭が待っているというが。

なにしろ忍耐力インジケータの針はEに漸近し、残り時間もなんとやらなのだよ、明智くん…

…もとい、森見くん。

 

 

hideandseek

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