前回、梅雨入りしましたと書いてから3週間経ちました。
すでに6月下旬。今年も残すところ190日あまりです。
渋谷スクランブルには、すでにカウントダウン待ちの人がたくさん・・・
・・・なんてことはないけど、雨でもイモ洗いのような人ごみは変わりません。
今月は2冊。
最近新調した遠近両用メガネがようやく目に馴染んで、下り階段で「オ〜ット!」みたいなことがたまにしかなくなりました(大汗)。
ユーモア小説からヒューマンドラマまで幅広い芸風を持つ著者が、今度は縄文から弥生への遷移期を舞台とするとってもレアな物語を書いた。
ダム建設の現場で、縄文から弥生期のものと思しき二体の人骨がほぼ完全な状態で発掘された。互いに向き合い手を結び合う形で三千年近く地中深く埋まっていた太古の男女は、いったいどんな時代に生き、そこにはどんなドラマがあったのか…
まず狩猟生活から農耕生活へと移行しつつあるその時代を実にリアルに描いていることに驚かされる。
そして、読み進めるうちにウルクとカヒィの若い二人が次第に惹かれあっていく恋愛模様に心の深いところが疼き始め、下巻の後半に現れる「歴史を作っているのは国家や政治や経済じゃない。歴史は恋が作っているのだ。」というフレーズにノックアウトされる。
ダイイングメッセージ的には、「そうだよぉ、そのとおりだよおぉぉぉ… 」だ。
終盤でウルクと身重のカヒィは、封建的で好戦的な”ワウのクニ”に反旗を翻し、命の糧”コーミー”を手にして追っ手をかわしながら二人の希望の地”フジィ”を目指して未知の原野へと分け入って行く。
読者としては、旅の終わりが見えているだけに読み進めるほど切なくなり、その時代を真摯に懸命に生き抜いた二人に涙しながら、(よく頑張った。悠久の時の中で心ゆくまで語り合うがよい…)と心の中で声をかけ読了した。
どんな物語を書いても、人と人の心を描くのが上手い作家だ。文句なしの五つ星。
この著者の作品は「ひなた弁当」に続いて2冊目で、本作は評判がすごく良いので手に取ってみた。
ちょっと見普通のおばあちゃんが、心を込めた手料理、優しいウソ、どんな人に対しても褒めて感謝する、この3つをソフトに繰り出しながら周囲の人たちを幸せにして行く物語。
著者らしい温かい手で肩を揉んでくれるような語り口で話は進み、あぁ、こんな人が身近に居てくれたら素敵だろうな、否、自分がなろうとしなきゃダメか、などと思わせられる。
食が重要なアイテムとして語られるところも「…弁当」と共通している。多くの人を惹きつけ心を癒してくれるおばあちゃんの手料理が宝物のように語られるところもいい。
性格の悪い読み手は、話が綺麗すぎるところに物足りなさを感じてマイナス1星としたが、この世知辛い世の中で一服の清涼剤のような作品であることは間違えない。