先日、三菱自動車の、というより日本のSUVの代名詞と言ってもおかしくない車、「パジェロ」の国内モデルの生産終了が発表されました。
1982(昭和57)年に初代が登場したパジェロ。
実に37年の長きに渡り4回のモデルチェンジを繰り返しながら、日本に於けるオフロード4WDのトップに君臨してきたと言っても過言ではないでしょう。
筆者の世代だと、この車にある種の憧れのような感覚を持つ人も多いと思います。
さて、筆者がこのニュースを聴いて感じたのは、奇しくもパジェロの生涯とほぼ重なる平成の世における「日本の国内事情と価値観の変化」でした。
以下にその考察をば(筆者のことですから当然浅めです)。
初期投資と維持費は安いほうがいいという「名より実を取る」、「必要最低限で十分」といった思想が、車についてもずいぶん浸透してきたと筆者は感じます。
現に’17、’18のメーカー別国内販売台数では、トヨタ、ホンダの1,2位は不動ですが、(失礼ながら大したことはないと思っていた)スズキ、ダイハツが3、4位を維持しているというデータからは、軽自動車の販売好調が窺えます。
一時期よく耳にした「重厚長大から軽薄短小へ」というような言葉をほとんど聞かなくなりました。
車に関しても「デカくて重けりゃガソリン食うし、作るのにも鉄や油をたくさん使うじゃん、それって環境的にどうなの」というような思考は当たり前になりました。
一世を風靡したハイブリッド車でさえ昨今のトレンドである電気自動車の前では、かつての輝きを失っています。
昨今は当たり前に見かけるプリウスの初代デビューは1997(平成9)年。当時のキャッチコピー「21世紀に間に合いました」は、今となっては空虚に響きますね。
SUVのユーティリティ面における優位性は認めますが、現在の日本国内で4輪駆動かつ最低地上高が高いパジェロのような車を日常的に必要とする人って一体どれくらいいるのでしょうか。
東京在住の筆者が言っても説得力に欠けますが、今や未舗装道路は、私有地か余程の山奥でないと見かけなくなりました。
自転車に夢中だった学生時代、ワイルドなコースを求めて、あえて秩父や甲府、日光方面の未舗装道路に走りに行っていたのが懐かしいです。
これは、大都市と地方都市では背景事情が全く異なるのでかなり大雑把で正確さを欠く見方かもしれませんが。
それでも客観データとして、世代別の車両保有率で20代は、70代に次いで2番目の低さいう統計があります。
筆者が接してきた範囲においても、若い人達から車自体とその所有に関する熱を感じなくなりました。都市部では、使うときにだけ借りるカーシェアリングも徐々に広がっているようです。
日本国内では、車を所有することに執着の強い人や見栄を張る人(張れる人)が徐々に減りつつあり、それを象徴する出来事が今回のパジェロのニュースと言えるのではないでしょうか。
それは時代の趨勢や情勢の変化の裏返しのようなものだし、筆者は常日頃、街中を我が物顔に走り回る大きくて重そうなSUVに一種の社会悪のようなものを感じているくらいですから、むしろ歓迎すべき変化と個人的には受け取っています。
ただ一方で、平成の世がまさにフェードアウトしていこうとしている今、パジェロ終了のニュースを聞いて一抹の寂しさを覚えた人も多いでしょう。
来るべき令和の時代に、戦後の日本を支えてきたとも言える自動車産業や車社会、そして車そのものがどう変わって行くのか、さらに注目して行きたいと思います。