昨日、関東地方は梅雨明けしました。先月の書評に「間もなく梅雨入りするかも・・・」みたいなことを書いたばかりなのに(号泣)。
今日は朝から金槌で脳天を殴られるような日差しが照りつけて暑いのなんの。
6月中の梅雨明けは観測史上初めて、23日間は1978年と並んで一番の短さだそうです。夏の水不足が心配になりますね。
さて、6月中旬から文庫(上)、(中)、(下)の3冊で1500頁はある大作を読み始めたので、今回は2編です。
次回はその感想を書くべく頑張らねば。
書店にたくさん並んでいるので読めば面白そうだが、これといった理由もなく避けて通っている作家はおられないだろうか?
私の場合は東野圭吾だった。それが今回はどういう風の吹き回しか気が付けば手に取っていた。バイリズムがP,S,Iとも最高調だったかもしれない(汗)。
読み始めは偏屈な学者が刑事たちを翻弄する定型的な警察ものと思ったが、ぎりぎりまで伏せられた真相や登場人物たちの心の機微にどんどん引き込まれ、最後は(あぁ~)と嘆息しホロっともした。さすが超人気作家だ。
一方、キャラクター濃いめの人物がいきなり説明なしで出てきて(これが作風?)と思ったら、テレビドラマ化された「ガリレオシリーズ」の6作目だそうな。慣れ親しんだ読者が前提のようだ。そのせいかどうか、本作にはテレビの「サスペンス2時間ドラマ」の臭いを強く感じる。実はあの手のドラマはどうも苦手なのだ。作りものっぽい、というのか…
・・・とはいえ1冊で決めつけるには惜しい作家なので、あえて星4つにして次につなげることにした。
それぞれの事情で世間から脱落しかけていた橘裕也、戸村サヤカ、勝田慎二の三人は、偶然雇われた北八ヶ岳の山小屋で山の魅力に目覚め、主人のパウロさんから冬山登山の手ほどきを受けるうちだんだんと自信を取り戻していく。
クライマーとして世界レベルの実績を持つパウロさんは、ヒマラヤの未踏峰を目指すまでに成長した彼らの背中を優しく押し続けるが、その先に控えていたのはある悲しい出来事だった。
パウロさんは、三人の若者に何を託そうとしたのか。そして彼らは、パウロさんの意思を糧として困難な初登頂を成功させることができるのか。
後半全部を占めるヒマラヤ登山の場面に唯一足らないもの、それは排泄シーンだ。逆にそれほどリアルな高山の世界が描かれているわけだが、この作品のテーマはもちろんそれだけではない。
人は他人を救おうとすることで自分自身も救われる、そして生きている限り人生は何度でもやり直せる…
著者が真に言わんとしたのはその2点と私は理解した。
山におけるトイレ問題を置き去りにした点(くどくて面目ない)、全般にやや冗長過ぎる点からマイナス2星としたが、山岳小説というレアなジャンルでこれだけ中身の濃い作品を仕上げる著者の力量に圧倒された。