年度明けましておめでとうございます。
さて、3月は個人的に一向に忙しくはなかったけど、3回しかアップデートできなかったのを期末、年度末で気忙しかった世間の空気のせいにして、今期も手前勝手にユルユル更新して行きますので、どうぞよろしくお願いします(個人ブログに「期」などないのだが)。
今回も小説3冊です。
- 有川浩「塩の街」★★★☆☆
- ある日突然、世界中の大都市に多数の巨大な塩の結晶が飛来し、その日から生きている人間を塩の塊にしてしまう邪悪な「塩害」が始まった。人口の激減により社会機能が麻痺した街で身を寄せ合って必死に生き延びようとする自衛隊パイロットあがりの秋庭と真奈。二人の前にエキセントリックな入江が現れた日から尊厳と生き残りを賭けた人類の反撃が始まった。
著者のデビュー作で自衛隊三部作のうち「陸」に当たる本作は、自ら後書きで「拙かった」と評すとおり本編の物足りなさ、歯がゆさが半端ではない。そのせいか後半にスピンオフの短編を付け加えて文庫化されているが、SFと言えば言えるストーリーなるも、それより有川浩のラブコメ色はデビュー当初からだったという点で妙に感心した。 - 原田マハ「楽園のカンヴァス」★★★★★
- アンリ・ルソーの絵画を巡る異色の国際ミステリー。著者に関しては、「キネマの神様」で映画についての詳しさに感心したが、本来はこの作品の主役である絵画、美術関係が専門で、現役キュレーター(?)としても活動しているらしい。
ルソーを軸とするストーリーにグイグイ引き込まれ、お蔭で本物の作品が無性に見たくなり国立西洋美術館に行くことになった。しかし無粋なことになぜか所蔵はなくがっくり落胆するも、帰りしなに覗いたミュージアムショップでマウスレストにぴったりの上品なトレシークッションを見つけ嬉々として帰ってきた。・・・単純である。 - 川上弘美「古道具中野商店」★★★★☆
- 無類の女好きで「だからさあ・・・」が口癖の中野さんが切り盛りする古道具屋にバイトで勤めるヒトミ。むっつりした同僚のタケオと恋人関係にあるようなないような。
ユルい人たちと懐かしい品々の中でユルい日々、行って戻るような日常が過ぎて行く。著者の作品は初めてだが、特別なことが起きるわけではない独自の「小説世界」に佇むカビ臭い中野商店と全編が醸す艶めかしい香りが頭に残った。