書評もどきシリーズ。今回は、2か月分で7冊。溜めるとシンドいっす。
- 鯨統一郎「ルビアンの秘密」★★☆☆☆
- 久々に読んだこの作家の小説は,強いて言えば劇画ではなくアニメ。三次元ではなく二次元。以前に感じたペタッとした平板的な印象は変わっていなかった。
ルビアンとは、父の溢れる愛情であることが最後に明かされるが、アイデアとしてはやや拍子抜けした。 - 中村航「夏休み」★★★☆☆
- 二組の男女がTVゲームに賭けるある重大な決意。若い4人は、夫婦の危機を乗り越えられるのか。
コントローラーを握りテレビ画面に向かって必死に勝負する場面が印象的ではあるが、ゲームの勝敗に人生における大きな決断を委ねるとはこれ如何に。理解不能とは言わないが「異次元の小説」って感じがした。 - 角田光代「対岸の彼女」★★★★☆
- この小説のテーマをひと言で表すなら「人生における他人との関わり方」といったところか。文章、プロットに一点の破綻もなく、グイグイ読ませる力はさすが直木賞受賞作だが、次作に手を伸ばす気までは起きなかったので星は4つにしておく。
- 山本甲士「巡る女」★★★★★
- もし若い頃のあの時、迷った末に異なる選択をしていたらその後の人生は今とは全く違っていたかもしれない。誰もが何かの場面で一度は必ず考えることを、著者はある女性を主人公にして三通りのシミュレーションしてみせる。
市役所の仕事、小説の執筆、子どもへの物語の読み聞かせ、そしておじいちゃんのこと。どの道を歩んでも結局あなたにとって大事なこと、関わらなければいけないことは変わらないのだよ、と優しく諭しているようである。終章でホッとさせる構成もうまい。おもしろかった。 - 北森鴻「親不孝通りディテクティブ 」★★☆☆☆
- 博多版スタスキー&ハッチかな。登場人物、ストーリーともかっこつけ過ぎでちょっとウ〜ン・・・、だった。
- 森沢明夫「津軽百年食堂」★★★★★
- 青森県弘前で明治時代から続く大衆食堂を軸にした物語。東京に出てバルーンアートで糊口を凌ぐ陽一は、寡黙に津軽そばを打つ父の姿を見て育ち、小学校の卒業文集には伝統ある食堂を継ぐ夢を綴っていた。東京で身の振り方、故郷との関わり方に悩む陽一。同郷の恋人七海と共にそれぞれの将来に迷い、苦悩し、そして下した決断は・・・
私にしては珍しく、実質3日で読了した。主人公と周囲の人々を生き生きと描き、明日への希望を感じさせるハートウォーミングな話。す〜んごく泣けました。 - 川上健一「4月になれば彼女は」★★★☆☆
- 青森県出身の著者の自伝的小説だそうな。高校を卒業して3日目の圭太。就職までの宙ぶらりんな一日がロードムービー風に語られ、道々出会う個性的な人達に圭太は自らの行くべき道についてヒントをもらって行く。
タイトルのイメージで読むとストレスが溜まるかもしれないが、エピローグが全体をキリッと締めている。丸一日の出来事を500ページ近い小説にしてしまう手腕には唸った。