先週末の涼しさは無かったことにしてください、なんて言われているような理不尽な暑さが続いていますが、皆さんお元気ですか。
私めは今年も自宅ではクーラーなしで頑張って節電に貢献しています。暑さに強い単純な造りで良かった(大汗)。
- 平安寿子「素晴らしい一日」★★☆☆☆
- 先月読んだ同じ著者の落語ものが面白かったので期待して手に取ったが,かなりのがっくり感。得意のユーモア小説集なるも6編の短編を通して印象が薄い。
- 小川洋子「妊娠カレンダー」★★★☆☆
- 芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」を含む短編集。表題作はさておき、第2編の「ドミトリイ」に震えた。
閑静な佇まいながら以前には寮生が失踪したこともある学生寮。両手と片足のない先生が管理人を務めるが,主人公「わたし」の従兄弟は静寂な雰囲気と寮費の安さに惹かれて入寮する。ところがその後「わたし」が何度訪ねても従兄弟は不在で会うことが出来ない。そうこうするうち何度目かの訪問時に管理人室の天井にあるどす黒い染みに気付く。
・・・へたなホラー小説より数段怖い。 - 奥田英朗「ウランバーナの森」★★★☆☆
- 著者デビュー作のモデルは,言わずと知れたビートルズのジョンレノン。避暑先の軽井沢で強度の便秘に見舞われたジョンは,森の奥深くにある浮き世離れした診療所を訪ねる。帰りしなに濃い霧の中で,過去に関係を持った人々と出会ううちに身も心も浄化され・・・。
現実のジョンも,1977~1979の夏を軽井沢の小野家の別荘で過ごしたという。彼には神秘主義がなぜか似合う。なんとなく中島らもの小説を連想した。 - 夏川草介「神様のカルテ」★★★★★
- 医師不足により野戦病院のような様相を呈する地方の総合病院で,栗原一止は内科医,救急医として超多忙な日々を過ごしている。
高度医療による冷徹な延命策も可能な現代の医療と,最期まで人としての尊厳をもって生きるという相反する命題に悩む一止は,末期ガンにもかかわらず常に心優しく気配りを忘れない安曇さんを看取ることで,ひとつの確信を得る。
登場人物が皆いい。そして何より漱石好きの一止の硬派な語り口がいい。あ~,こうして書いていても目がウルウルして来る。絶対に電車の中で読んではいけない種類の小説。でも絶対にお薦めします。とても良い小説でした。