少し古い話ですが,今年の3月と6月の2回に渡って,国際宇宙ステーション(ISS)に,スペースシャトルで輸送された日本の実験棟「きぼう」が接続され,重力の無い空間でしか出来ない諸々の実験,それも日本オリジナルのものが始められました。
それに関連して,私の職場に送られてくる某業界紙に掲載された,あるコラムが面白かったので,あらすじを紹介します。投稿者はN大学法学部のK教授。法律の先生ですが,SF小説がお好きな方と見ました。往年のSF読みとしては,オオッ~,こっ,これは!と嬉しくなった次第。
- コラム「きぼうの未来と地球の温暖化」
- まず,K教授は,今後,ISSのような宇宙開発に人類の未来を求めるとすれば,超省エネで宇宙に人間や荷物を運ぶ手段を手に入れる必要があると言っています。スペースシャトルのような燃焼型のロケットは,CO2を相当量,排出するので,地球温暖化防止の意味から,発射回数を増やすには限界があると。
ここで引き合いに出されるのは,レイ・ブラッドベリの『ロケットサマー』(残念ながら,これは未読)。ロケットの発射後には,冬でも温かい日が訪れるというお話だそうです。そんなことが無いように,地球環境に配慮した宇宙行きのアイデアが,SF小説から2つ,例示されています。
- 『楽園の泉』アーサー・C・クラーク(既読)
- 静止軌道上の衛星から地表まで,垂直にワイヤーを垂らして,宇宙行きエレベーターを走らせようというもの。軌道上から地表までは3万6000kmあり,鋼製のワイヤーでは自重で切れてしまうので,軽くて強い炭素繊維を使う方法が現実的だろうとしています。膨大な量の炭素繊維を作るのに,温暖化ガスのCO2を原料にすれば,まさに一石二鳥。
ただし,この方法には,静止軌道上の到着側施設を作るのに,たくさんの化石燃料ロケットを打ち上げなければならないという,欠陥があります。
- 『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・A・ハインライン(既読)
- そこで,K教授は,軌道上に大量の物資を運ぶ方法として「マス・ドライバー」が有効であると結論付けています。Mass(質量)をDrive(推進)させる,つまり,巨大カタパルトからロケットを宇宙空間に放り出す,という方法。地球の回転速度をも利用するために,山の稜線,それも西向きにリニアモーターカーの軌道を建設し,スペースシャトルのオービター部だけを射出すれば,巨大燃料タンクとブースターロケットは不要になると。
ウ~ム,夢のある話ですな~。リニアモーターの駆動電源は,何だ,火力発電か?なんて考えちゃいけません。JR東海さん,次の実験線は,富士山の麓から頂上に向かって作りませんか。
真っ赤な夕日に映える,つま先上がりの巨大滑走路。麓には,射出待機のエンデバー。上空には鳥のように舞い上がってゆくディスカバリー。あれ?どうやって日本まで運んできたんだ(笑)。
■ISS現在の姿
■「きぼう」日本実験棟