最近読んだ本_2018/10

渋谷の再開発が徐々に形になってきています。写真はこの9月中旬にオープンした「渋谷ストリーム」。典型的な都市河川の渋谷川もおしゃれな雰囲気に馴染んでいました。

 

今月は4冊。
だいぶ偏っていますが大目に見ていただければ幸いです(笑)。

 

荻原浩「逢魔が時に会いましょう」★★★★★

 ナイスなタイトルのナイスな連作短編集である。
 研究一筋で飾りっ気ゼロの民俗学者布目准教授と、院に進むか就職か迷うも映画制作の夢を捨てきれない高橋真矢の二人が狂言回しを務めるが、本書の真の主人公は、座敷わらし、河童、天狗、そう、逢魔が時がよく似合うもののけ達だ。
 リアルでは出会いたくないものばかり…
 肩の凝らないエンタメ作に仕上がっている本書においても、私のお気に入りの直木賞作家は、豊富な知識と表現力を駆使し読者を惹きつけて離さない。特に座敷わらしを小学校の教室で見つける件は、妙に真に迫ってあな恐ろしや恐ろしや。
 一方、並行して進展する布目と真矢のラブラブは、軽めのご愛嬌でなんとも微笑ましく、もののけ達とのバランスも絶妙だ。
 超一級の娯楽作、ぜひご一読あれ。

 

佐々木閑「真理のことば ブッダ」★★★★★
佐々木閑「般若心経」★★★★★
佐々木閑「集中講義大乗仏教」★★★★★
  
なんでこんなに仏教関係の本を読むのかは別稿を参照していただくとして、以下は3冊通して読んだ感想である。
  1. 今から約2500年前、釈迦がインド北部で開いた初期仏教(原始仏教、根本仏教とも言われ、著者は分派である上座部仏教を併せて「釈迦の仏教」と呼んでいる)は、生きることに苦しんでいる人に対し、自ら努力と修行を重ねて悟りを目指し、最終的に自力で自分を救う道を説くものだった。
  2. それは論理的かつ明解で潔い教えである反面、老人や女性、病人のような当時の社会的弱者にとっては途轍もなく厳しいものだったため、その道に進めるのは健康、意志堅固で出家修行ができる条件に恵まれた人に限られていた。
  3. 一方、大乗仏教は、釈迦の死から約500年後に興ったいわば当時の新興宗教で、宗派ごとに在家でブッダ(悟りを開いた人)を目指すことができる諸々の道を示したことから、初期仏教には救いを見出せなかった人々に広く受け入れられて行った。
  4. 日本には約1500年前、中国を経由して漢訳されたお経と共に大乗仏教だけが伝わり、その後悟りよりも現生利益を求める宗派などが現れたりしながら支配層から一般大衆まで広まり、現在に至っている。
  5. さて、標記3冊の著者である佐々木氏は、仏教学者、真宗高田派の僧侶という肩書きを持ち、かつ花園大学の教授として仏教学科で教鞭をとるなどたいへん立派で頭の良い方である。しかも難しい本もたくさん出されている(本書の中では自らの著作を、「難しくて高い本なので図書館で借りて読んでください」と仰っている)。
  6. そういう頭の良い方は、得てして難しいことさらに難しく言ったり書いたりするものだが、この方は違う。難しいことを優しく、誰にでも分かるような言い方、論法、説明順序で表す才に長けている。
  7. その佐々木教授が書かれたこの3冊の本で、私は「釈迦の仏教」と「大乗仏教」の違いが初めて分かった(ような気がした)。
  8. 一言で言うなら「釈迦の仏教」と「大乗仏教」は、全く違うものである。両者ともお釈迦様の教えに端を発するものの、信仰されている国や地域はもちろん、その歴史、方法論、目指すものは全く違う。
  9. 教授ご自身は、釈迦の仏教をこよなく愛し深く傾倒しておられるが、だからと言って別物とも言える大乗仏教とその数多ある宗派ばかりかキリスト教ほかの宗教を決して否定したりしない。
  10. 教授は言う。「宗教に正しいも間違っているもない。大事なのはそれを信じた人が幸せでいられるかどうかです」。さらに「どんな宗教であっても救われる人が一人でもいるならば、その教えには意味があります」と。深い言葉ではないか。
  11. 実質的に釈迦本来の教えからは大きくかけ離れてしまっている大乗仏教だが、教授は、仏教が時代や状況、また求められるものに応じてバリエーションを増やし、今まで救うことができなかった人を救えるようにプラスの進化を遂げたとも言える、と前向きに分析している。
  12. あまりにも間口の広い仏教全体をどう見たら良いのか迷い、極端に言えば、理解を深めるためには何れかの宗派に肩入れすべきか?などとも考えていたところ、その俯瞰的な視点、分析と、学者らしい物事を客観的、学究的に見る姿勢は、大いに参考になり刺激を受けた。
  13. 最後に教授の僧侶らしく学者らしからぬ言葉を挙げて本稿を締めたい。
  14. 「仏教は、心の病院です。そして病院のように出入り自由、本来そういう宗教です」

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