最近読んだ本_2018/03

投稿者: | 2018.04.04 (水) 21:31

前回3月中旬の書評では、前口上に高知で桜が満開と書きました。

 このところ初夏の陽気が続いている東京では、今日現在ほぼ葉桜になっています。いやはや何とも時間の経つのが速くて速くて。次回の投稿には”梅雨の走り”なんて書くのだろうか・・・

 さて、3月は3冊。世の中にはいろいろな作家が居て、いろいろな本があることを感じた1ヶ月でした。

 

奥田英朗「ナオミとカナコ」★★★★★

 高校時代から親友の二人。先に結婚したカナコが夫からひどいDVを受けていることを知ったナオミは、別居か離婚か逃避を強く勧めるが、すでに夫のマインドコントロール下にあるカナコはなかなか首を縦に振らない。

 そんな折、職場での不祥事をきっかけに中国人の女性社長と知り合ったナオミは、したたかな社長との会話の中からカナコを救うための究極の解決策、DV亭主の排除を思い立ち、二人掛りの周到な殺人計画を練り始める。

 ナオミとカナコが目論む「夫の排除」は計画どおりに進み完全犯罪は成立するのか。一見完璧な二人の行動に落ち度や落とし穴はないのか。○ページの文庫本なるも、著者ならではの読みやすさと面白さで一気に読んだ。前半のDV亭主排除に至る過程もさることながら事後の展開がまたスリリングで、ハラハラドキドキしながら手に汗を握って読み終えた。

 それとは別に、この本を読みながら実はデジャブのようなものを感じ、それはなんなんだろうと若輩は考えた。

 己が人生について普通の人は、真っ当に懸命に、あるいは何の落ち度もなく日々を送っていると思っているだろう。その一方で多くの人の心の奥底には、もしかすると自分の人生は、いつか何かのきっかけで一気に破たんするのではないか、という危機感が潜んでいる。

 この小説は、その潜在的な脅迫観念のような部分をゾワゾワと刺激し、結果デジャブのような感覚を抱かせるのではないか・・・

・・・と若輩は結論付けた。

 おいおい、ちょっと待ちたまえ明智くん、そうは言っても疾しいことや落ち度や挫折のない人生なんてありえんよ。
 だいいちそんなもん、面白くもなんともないぢゃないか。

・・・と昔々、怪人二十面相が言ったかどうかは定かでない。

 

エンリケ・バリオス著、石原章二訳、さくらももこ絵「アミ 小さな宇宙人」★☆☆☆☆

 11か国語に翻訳されているベストセラーで、このたびは書店に在庫がなく取り寄せで2週間待つほど期待した本だった。

 読んでみると、全体に人道的、道徳的な正しさが貫かれているし、人間は種としてもっと進化すべきでそのための伸び代はまだあるはず、という私の楽観的な願望と推測にもある意味沿った小説ではあった。

・・・がしかし、宇宙人のアミは、超絶的に進んだ乗り物に地球人のペドロ少年を乗せ、彼らの基準においては当たり前に”進んだ”世界や人々の立ち振る舞いを見せて周る。

 そして道々、「地球は全体としてまだまだ善良じゃない」、「我々は未開で野蛮な文明の救済を進めている」、「地球人にも我々の基準に近づいている人は増えつつある」、「神は宇宙の基本法、神は愛なんだ、わかるかい?」と自信を持ってペドロに説く。かくして感化された我らがペドロ少年は、「僕、この体験を小説に書く!」と星の目でアミに約束する。

 あ”ぁ~入信しちゃったよ、それも純で幼気ない少年が。
 それになんなんだ、この得体の知れない宇宙人アミの上から目線は。

 この小説から○○教の宣教師と無垢な現地人の構図を連想したのは私だけだろうか。

 その宣教師に教え諭され○○教に入信した人々は、皆が皆幸せになれたのか。逆に今までの伝統と調和を乱され、挙句の果てには搾取の対象となった人々もいたではないか。

 そういう意味で、君たちは劣っている、劣っているのは悪いことだ、だから〇〇を信じて努力するのだ、さすれば我らと同じく幸せになれる・・・、と何の迷いもなく主張する本書と著者にすごく抵抗を感じ、また、子供向けにこういう本を出版したことに底知ぬ怖さすらを覚えた。amazonでの高評価も信じられない思いだ。

 再読することはもうないし、続編3冊にも手は出さない。他人様にも勧めないと断言できる。そういう本だった。

 

笹本稜平「時の渚」★★★★★

 一言で括れば、「元刑事の私立探偵が人探しに奔走する物語」という使い古されたパターンのミステリーだが、本書のテーマは「親子の絆」だろう。

 ストーリーは重層的で伏線の張りめぐらせ方、人物の描き方も上手く、おまけに文章がすごくしっかりしているので安心して面白く読めた。

 依頼主で元暴力団員の松浦老人と息子、その息子を預かり育てる○○ちゃん、容疑者駒井とその一家、そして探偵茜沢と一人暮らしの父親。各々のストーリーが複雑に絡み合い、二転三転しながら驚愕と慟哭のラストへと突き進む。

 敢えて言えば、「偶然ってそんなに重なるの?」というご都合主義と私が苦手な「縁戚もの」という欠点があるにはあるが、それらを補って余りある魅力が本書にはある。

 文句なしの5つ星。次作に手を伸ばしたくなる作家である。

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